初登場1位の『ラ・ラ・ランド』、映画業界の常識をくつがえす大ヒットの意義

常識を覆した『ラ・ラ・ランド』の大ヒット

 三つめは、日本独自の鋭い判断があったこと。『ラ・ラ・ランド』は確かに世界中で大絶賛を浴びているが、本国アメリカをはじめとする諸外国でのヒットの規模はあくまでも「過去のミュージカル作品と比べれば十分なヒット」という水準でしかない(ちなみに今年のアカデミー作品賞ノミネート作品の中で最大のヒットとなっているのは、日本公開が未だに決まっていない『Hidden Figures』だ)。日本では興収30億突破もあり得る現在の勢いだが、外国の実写映画で30億を超えた作品は、例えば2016年だと『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』と『オデッセイ』の2作品のみ。単純に海外の興行成績から作品の規模を判断するのではなく、日本の観客との相性の良さを確信して、作品自体の規模以上に大きな規模で公開して、そこで結果を出してみせた『ラ・ラ・ランド』。そこにはいくつもの運もあったのだろうが、そんな運をも引き寄せた配給サイドと興行サイドのファインプレーに心から賛辞を送りたい。

■宇野維正
音楽・映画ジャーナリスト。「リアルサウンド映画部」主筆。「MUSICA」「装苑」「GLOW」「NAVI CARS」ほかで批評/コラム/対談を連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)。Twitter

■公開情報
『ラ・ラ・ランド』
TOHOシネマズ みゆき座ほか全国公開中
監督・脚本:デイミアン・チャゼル
出演:ライアン・ゴズリング、エマ・ストーン、J・K・シモンズ
提供:ポニーキャニオン/ギャガ
配給:ギャガ/ポニーキャニオン
(c)2017 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.
Photo credit: EW0001: Sebastian (Ryan Gosling) and Mia (Emma Stone) in LA LA LAND.Photo courtesy of Lionsgate.
公式サイト:http://gaga.ne.jp/lalaland/

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