GReeeeNは“青さ”こそが魅力的だったーー青春映画としての『キセキ ーあの日のソビトー』

青春映画としての『キセキ』の魅力

 一方で、女性キャストも見逃せない。今年最大のブレイクが確約されている平祐奈(引用:上白石萌歌、福本莉子、平祐奈、中条あやみ……2017年にブレイクしそうな若手女優たち)の登場シーンは、一見すると大筋からさほど関係が無いようにも思わせるが、登場人物の中で唯一の“受け手”側として、兄弟と父親を繋ぐ重要な役どころだ。

 そして何といっても、菅田将暉の恋人役を演じる忽那汐里が凄い。CDショップで働く彼女のレジで、CDを購入する出会いの場面。そのシチュエーションの古風さもさることながら、会話のきっかけが海援隊だなんて、実に渋すぎるボーイミーツガールだ。そのあとのライブハウスでの彼女の表情は、もう映画全体を独り占めするだけでなく、彼女の存在がなければGReeeeNはなかったのだと思えてしまう。

 菅田が彼女のことを思いながら、ノートに「キセキ」の詩を書き記すことから始まる終盤。映画としてのまとまりでは必然的ではあるが、それこそ「愛唄」を書いて欲しかったというのが正直なところだ。そしてできれば、隠れた名曲「いつまでも」に繋がるよう、彼女の写真を何枚も撮る場面があれば、個人的にはよりときめく映画になったのではないかと考えてしまう。

■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

■公開情報
『キセキ ーあの日のソビトー』
全国公開中
出演:松坂桃李、菅田将暉、忽那汐里、平祐奈、横浜流星、成田凌、杉野遥亮、早織、奥野瑛太、野間口徹、麻生祐未、小林薫
監督:兼重淳
脚本:斉藤ひろし
配給:東映
製作プロダクション:ジョーカーフィルムズ 
(c)2017「キセキ ーあの日のソビトー」製作委員会
公式サイト:kiseki-movie.com

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「作品評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる