MCUの新しい時代はここから始まる!? 『ドクター・ストレンジ』初登場1位の意味

『ドクター・ストレンジ』初登場1位の意味
20170202-kougyouth.jpg

 

 先週末の動員ランキングで初登場1位となったのは『ドクター・ストレンジ』。全国350スクリーンで公開されて、土日2日間で動員23万8000人、興収3億9400万円、公開日の金曜日からの3日間では動員31万3354人、興収5億1393万1000円という堂々たる成績だ。

 『ドクター・ストレンジ』はマーベル・シネマティック・ユニバース単独作品の第1作目としては2015年9月に公開された『アントマン』以来の作品となるが、その『アントマン』の公開初週の週末の動員14万3236人、興収2億39万6500円も大きく上回り、この約1年半におけるアメコミ・スーパーヒーロー映画の日本における浸透ぶりを証明した。比較対象をディズニー以外のマーベル作品に広げても、昨年6月に公開されて日本でもヒットした『デッドプール』の公開初週の週末興収3億8333万2900円をわずかに上回っている。

 『デッドプール』のヒットの要因については、作品に対する海外での前評判の高さと日本での草の根的なプロモーションが功を奏したと以前に分析したが、R15指定作品でありVFX的な観点からは地味な作品だった『デッドプール』のヒットと、今回の『ドクター・ストレンジ』のヒットの構造は少々異なる。

 ホラー畑の新鋭監督スコット・デリクソンが抜擢されていることからもわかるように、実は『ドクター・ストレンジ』も作品の内容自体はわりと大人向け。特に主人公のドクター・ストレンジが覚醒の境地に到るまでの過程は、アメリカ人にとっては馴染みのあるサイケデリック・カルチャーのメタファーが散りばめられている。しかし、一般の観客にとってそうした要素がマイナスになることなく、表面的には洗練と一般化がはかられているのはさすがディズニー作品といったところ。ちなみに現在のウォルト・ディズニー・ピクチャーズの礎となった1940年のアニメーション作品『ファンタジア』が、60年代サイケデリック・カルチャーの中で再評価されたというのは有名なエピソード。ある意味、『ドクター・ストレンジ』はディズニーのサイケデリック・サイドの伝統を引き継いだ作品とも言えるのだ。

 日本の観客にとって『ドクター・ストレンジ』の間口が広がった要因は二つある。一つは、『ハリー・ポッター』シリーズや『ファンタスティック・ビースト』シリーズにも通じる、子供から大人まで楽しめる派手なVFX効果が売りの「魔法もの」であるということ。もう一つは、以前に比べたらかなり状況は変わってきたものの、それでもまだ女性の観客層に弱いアメコミ・スーパーヒーロー作品にあって、ベネディクト・カンバーバッチ、マッツ・ミケルセンといった女性人気の高い役者が出演していること。マッツ・ミケルセンは公開週に来日して精力的にプロモーションをおこない、本作の認知に大いに貢献したが、もし主演のベネディクト・カンバーバッチも一緒に来日していれば、さらに大きな効果が期待できたに違いない。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「興行成績一刀両断」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる