ゴールデングローブ賞も受賞! ポスト・カンバーバッチはトム・ヒドルストンで決まり?

ゴールデングローブ賞受賞“トムヒ”の魅力

 さて、肝心のトムヒはというと、『ナイト・マネジャー』のパイン役で持てる魅力をいかんなく発揮している。ホテルの支配人が似合う英国紳士らしい振る舞い。187cmの長身を活かしたスーツの着こなし。フレンドリーでキュートな笑顔。『マイティ・ソー』のロキ役もそうだが、相手をタレ目ぎみの愛嬌のある顔で油断させておきながら、苦悩に満ちた表情で不安にさせる。劇中でジェドが言う「あなたは誰なの? みんなを魅了している」というセリフが似合うのも、あの超恋愛体質女子ティラー・スイフトを夢中にさせ、ニコール・キッドマンもちょっかいを出さずにいられないという、モテ男のトムヒならでは。このドラマは、カレの原作を基にした壮大なハーレクイン・ロマンスとしても楽しめ、美しい映像でスリリングに展開するパインとジェドの恋は、オトナ女子の心をときめかせてくれる。

 トム・ヒドルストンは現在、『007』シリーズの次のジェームズ・ボンド候補とも噂されている。なんと言っても英国人であり、前述のように本人もゴールデングローブ賞で「スパイものが好きなんだ」と公言。さらにボンドに近い役どころを演じた『ナイト・マネジャー』が成功したとなれば、その話もがぜん現実味を帯びてきてしまうが、ファンとしては、既にマーベルの『マイティ・ソー』というシリーズを抱えている以上、アクション俳優の色はつけてほしくない。『アベンジャーズ』で怪力のハルクから蝿のごとく床に叩き付けられていたように損な役回りになるのも、ちょっと心配だ。先輩のカンバーバッチが『SHERLOCK/シャーロック』でエミー賞を取った後、アカデミー賞作品賞の『それでも夜は明ける』に出演し、『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』でオスカー候補となったように、重厚な人間ドラマでも認められるようになってほしい。だが、今後の予定はハリウッド版『進撃の巨人』とも言える『キングコング: 髑髏島の巨神』(3月25日公開)で主演、マイティ・ソーシリーズの最新作『Thor: Ragnarok(原題)』でカンバーバッチと共演と、大作アクションが続く。

 ただ、今回のゴールデングローブ賞受賞で、トムヒを取り巻く状況は変わってくるだろう。もともとイギリスのイートン校、ケンブリッジ大学、王立演劇学校という華麗なる学歴をもつ知識人であり、受賞コメントでも南スーダンの窮状を訴えるなど社会貢献の意識も高い彼。アート性のある監督に見初められ、演技の潜在能力を今以上に発揮できれば、5歳年上のカンバーバッチより先にオスカー像を手にすることも不可能ではないはずだ。

■小田慶子
ライター/編集。「週刊ザテレビジョン」などの編集部を経てフリーランスに。雑誌で日本のドラマ、映画を中心にインタビュー記事などを担当。映画のオフィシャルライターを務めることも。女性の生き方やジェンダーに関する記事も執筆。

■配信情報
『ナイト・マネジャー』
Amazonプライム・ビデオにて配信中
原作:ジョン・ル・カレ
監督:スサンネ・ビア
脚本:デヴィッド・ファー
出演:トム・ヒドルストン、ヒュー・ローリー、オリビア・コールマン、エリザベス・デビッキ
(c)Producciones Fortaleza AIE MMXV
Amazonプライム・ビデオ:www.amazon.co.jp/PrimeVideo

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