『太陽を掴め』吉村界人×中村祐太郎監督が語り合う、映画新世代が感じていること

『太陽を掴め』中村祐太郎監督×吉村界人対談

中村「映画はある程度のファンタジーを届けるもの」

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ーー完成した作品をご覧になっていかがでしたか?

吉村:僕は映画が大好きなので、大きいものから小さいものまで結構いろいろな映画を観るんですけど、『太陽を掴め』はジャンルレスな、かなり異質な映画だなと。鑑賞後、決して晴れやかな気持ちにはならないんですけど、中村監督にしか生み出せない独特の雰囲気がある。僕自身すごく好きな作品ですね。いまや大スターのトム・クルーズやブラッド・ピットが若い頃に出演していた映画って、同じように独特の雰囲気があるんですよね。中でもフランシス・フォード・コッポラ監督の『アウトサイダー』みたいに、「これはこの時にしかできなかった映画だ!」と思えるような作品って本当にたまにしかない。そういう意味で、『太陽を掴め』は、まさに“記録する”、“その瞬間を収める”ような、刹那のある映画だと思うんです。それってめちゃくちゃ芸術として大事だなって。

中村:僕は、映画ってある程度ファンタジーを届けるものだと思うんです。だから映画を作る上で、いろいろな要素を混ぜていきながらひとつのファンタジーにすることを目指しています。でも今回は、吉村界人、浅香航大、岸井ゆきのという3人の力が大きかった。僕は陰ながら3人のことを“恐るべき子供たち”って呼んでいたんですけど、この3人だったからこそ、決められた尺度を突き破ることができたんじゃないかなと。僕自身も嫉妬してしまうぐらいに、3人のエネルギーによってこの映画の方向性が決定づけられたと思います。

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吉村:中村監督と同じように、僕ら3人はそれぞれキャラが全然違うんですけど、映画に対する気持ちとかいまの自分に対する歯がゆさとか、割と考えていることが同じだったんです。そういうことが共有できたので、一緒に仕事ができて本当に良かったなと思いますし、尊敬しています。僕は、“塗り替えるのは僕らの世代”という言葉を座右の銘にしているので、そういう意味でも同世代の彼らとの仕事はとても刺激的でした。いろいろな先輩方を見てきて、「昔は良かったな」と思うことももちろんあります。でも、僕としては過去も未来も欲しくないんですよ。欲しいのは“いま”。だから僕らが塗り替えるしかないというのは本当に思っていて。世代で分けるのもどうかとは思うんですが、正直「昔はよかった」なんて言いたくないし、来年にはよくなっているとも言いたくないんです。

中村:そういう意味では、この『太陽を掴め』という作品は日本映画の枠組みで考えるとすごくノイズだなと思います。もちろんいい意味ですけどね。若者たちを中心に1本の映画を作って、ずっと“イエス”だと思っていたことに対して、ひとつ“ノー”を提示した。まだ公開前(※取材日は11月中旬)でこの映画の影響は何も感じ取れていないんですけど、僕の中では「揺さぶってやったぞ!」という気持ちは強く持っています。

(取材・文=宮川翔)

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■公開情報
『太陽を掴め』
12月24日(土)よりテアトル新宿、名古屋シネマスコーレほか全国順次公開
出演:吉村界人、浅香航大、岸井ゆきの、三浦萌、森優作、内田淳子、松浦祐也、古舘寛治、柳楽優弥
監督・脚本:中村祐太郎
プロデューサー:髭野純
脚本:木村暉
撮影:鈴木一博
音楽:池永正二
制作・配給:UNDERDOG FILMS
89分/カラー/2016年/シネマスコープ
(c)2016 UNDERDOG FILMS
公式サイト:taiyouwotsukame.com

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