えなりかずき、“何をやらせてもえなり”の強み 芸歴約30年で辿り着いた境地を探る

 例えば一昨年のドラマ『ごめんね青春!』で、関ジャニ∞の錦戸亮演じる主人公の兄を演じた時、まずジャニーズの兄貴がえなりかずきということでひとつ笑いの種が生まれた。そして、その妻が中村静香演じる元グラビアアイドルで、さらに不倫に走るというギャップを連続して積み重ねていくことで、笑いを増幅させた。宮藤官九郎の脚本の巧さも冴えたドラマだったが、ここにえなりかずきを配役させるキャスティングの妙がとくに目立っていたのだ。

 俳優として、いまだに映画への出演がないというのは少々意外な気もするが、このキャラクターが活かされるのはテレビという場が相応しい。ドラマ以外の場所では、テレビ朝日系のクイズ番組『くりぃむクイズ ミラクル9』にレギュラー出演していたり、ワイドショーなどでのコメンテーターとしての活躍も見受けられる。これも多彩な趣味と、他の同世代を圧倒するほどの経験値がものをいうからだろうか。また、以前バラエティ番組で見せたゲーマーとしての一面や、歌手デビューをした経験も、彼の経験値を上げるギャップ性のひとつである。

 ハマリ役を持った役者というのは確かに強い一方で、子役の多くが子供の頃に演じたハマリ役の印象を引きずって大人になっていく。その中でも、えなりかずきという役者は、そのあまりにも大きすぎるハマリ役を、逆に強みに変えることができているわけだ。そのイメージとともに、本当のベテラン俳優として歩んでいく覚悟が、彼の演技からは伝わってくるのだ。

■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

■番組情報
『コック警部の晩餐会』
水曜深夜0時10分〜
出演:柄本 佑、小島瑠璃子、西銘駿、久松郁実、えなりかずき、藤真利子
脚本:船橋 勧
音楽:田渕夏海、中村巴奈重
プロデューサー:田中健太
演出:中前勇児、吉田健
製作著作:TBSテレビ
公式サイト:http://www.tbs.co.jp/cook_keibu/

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アクター分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる