週刊誌の本質を捉えた“最高だけど最低”な映画 現役記者が『SCOOP!』を語る

週刊誌記者が観た『SCOOP!』

 しかしスクープを撮ったときの快感は合理的な考えを吹き飛ばすほど爽快だ。写真が撮れたときは記者は「ウォー」と叫び、カメラマン「オッシャー」と絶叫をあげる。全力疾走で夜の街を走ることもザラ。静と野火がそうした環境の下デキてしまうのはいわば必然。吊り橋効果、スットクホルム症候群のようなものだ。

  『SCOOP!』のラストはある意味で“最低”だ。都城静の運命を狂わせたチャラ源(リリー・フランキー)みたいなネタ元、週刊誌記者なら必ず一人や二人いる。他人事ではなく、人一倍後味の悪さを感じてしまう。

 殺人事件、金銭トラブル、不倫等々――、人間の深淵を取材しているうちに記者達は魔界を覗いているような気分になる。いつまでこの仕事を続けられるだろうかという思いとともに、いつしか“滅びの予感”のようなものを抱くようになる。それを最悪の形で提示されるのだから気分も悪くなるというものだ。そういう意味では大根仁監督は、映画の中で週刊誌の本質を的確に捉えているといえる。

 週刊誌は「最低だけど最高」の仕事だ。その光と影を鮮やかに切り取った『SCOOP!』は、だからこそ「最高だけど最低」の映画だと思うのだ。

(文=月島四郎)

■公開情報
『SCOOP!』
全国公開中
監督・脚本:大根仁
出演:福山雅治、二階堂ふみ、吉田羊、滝藤賢一、リリー・フランキー
(c)2016「SCOOP!」製作委員会
公式サイト:scoop-movie.jp

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