山田尚子監督は“映画作家”の名にふさわしい存在だ 映画『聲の形』の演出法を分析

『聲の形』に見る、映画作家としての山田尚子

「可愛いな、えへへ」

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 山田尚子作品で忘れてはならない特徴は、女の子たちの可愛らしさだ(京都アニメーションは別監督の作品でもいつも可愛いキャラばかりだが)。山田監督は女の子を描く時「可愛いな、えへへ」という気持ちで描くのだそうだ。(参考:アニメ!アニメ!「たまこラブストーリー」山田尚子監督インタビュー

 決して「ほら、こういうの可愛いでしょ?」ではなく自分で心から可愛いと思って描いているということだろうが、彼女の作品の女性キャラの可愛さの秘密がこの言葉に込められているような気がする。京都アニメーションの他の監督作品と比較しても、山田作品の女性キャラは、作られた可愛さというよりも自然ににじみ出るような可愛いさを内包している。

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 石田将也の母がひょっこり廊下から顔を出す芝居だったり、公園で姪のマリアを見守る石田の手の振り方だったり(男でも可愛く描くんだなと思った)、硝子が石田から隠れてヒョイと座り込む時の仕草であったり……。本作のようなシビアな作品であっても、キャラの可愛さはそこかしこに滲み出ている。

 若くして、すでにアニメの世界では、その名声は知れ渡る山田尚子監督だが、本作はアニメを見慣れていない実写映画ファンにも訴える力があるだろう。アニメファンのみならず、実写映画に目の肥えた観客にも「映画作家・山田尚子」を発見してもらいたい。

■杉本穂高
神奈川県厚木市のミニシアター「アミューあつぎ映画.comシネマ」の元支配人。ブログ:「Film Goes With Net」書いてます。他ハフィントン・ポストなどでも映画評を執筆中。

■公開情報
映画『聲の形』
公開中
出演:入野自由(石田将也役)、早見沙織(西宮硝子役)、悠木碧(西宮結絃役)、小野賢章(永束友宏役)、金子有希(植野直花役)、石川由依(佐原みよこ役)、潘めぐみ(川井みき役)、豊永利行(真柴智役)、松岡茉優(石田将也役)
原作:「聲の形」大今良時(講談社コミックス刊)
監督:山田尚子
脚本:吉田玲子
キャラクターデザイン:西屋太志
美術監督:篠原睦雄
色彩設計:石田奈央美
設定:秋竹斉一
撮影監督:髙尾一也
音響監督:鶴岡陽太
音楽:牛尾憲輔
主題歌:aiko「恋をしたのは」
音楽制作:ポニーキャニオン
アニメーション制作:京都アニメーション
製作:映画聲の形製作委員会(京都アニメーション/ポニーキャニオン/朝日放送/クオラス/松竹/講談社)
配給:松竹
(c)大今良時・講談社/映画聲の形製作委員会
公式サイト:http://koenokatachi-movie.com

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