『ストリート・オーケストラ』監督が語る、スラム街の“奇跡”「音楽は人生を変えられる」

『ストリート・オーケストラ』インタビュー

「子どもたちと主演俳優ラザロ・ハーモスの関係が1番の魅力」

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ーーエンドロールの話が出てきましたが、実話ベースの映画には、エンドロールの前に登場人物たちの“その後”がテロップで説明されることが多いですよね。今回の作品にはそれがありませんでしたが、自身の経験が反映されていることによるものなのでしょうか?

マシャード:実際にあった話と自分が経験したことをミックスしているから、エンドロールも含めて全体的により映画的な質感になったんだと思う。それに、この作品には僕の経験だけでなく、主人公のラエルチを演じたラザロ(・ハーモス)の実体験もミックスされているんだ。実は、当初ラエルチ役には別の俳優を考えていたんだ。僕の長編初監督作である『Lower City』に出演してもらっていて、『ナルコス』の主役で有名になったヴァグネル・モウラにお願いしようと思っていた。ラザロも『Lower City』に出演してもらっていて、彼にはラエルチの友人役でオファーをした。すると、彼は「役について自分からお願いしたことはないけど、今回は初めてお願いさせてほしい。僕にはどうしてもこの友人役は演じられない。僕はラエルチ役しかない演じられない」と言ってきたんだ。

ーーどのような理由で?

マシャード:彼曰く「ラエルチは僕自身で、これは僕のストーリーでもあるんだ」という理由だった。今はブラジルを代表するスターになっているけど、実はラザロ自身もスラム街出身で、幼い頃に母親を亡くし、飢餓も経験し、今回出演している子どもたちよりもさらに貧しい環境の中で育っていた。彼も、映画に出てくるような社会的なプロジェクトを通して師と仰ぐダンサーと出会い、それが彼の人生を変えるきっかけになったんだ。だからラザロには、「これは自分の物語として僕自身が綴らなければいけないんだ」という強い気持ちが備わっていた。僕はこの作品の一番の魅力は、子どもたちとラザロ本人の関係だったんじゃないかと思う。子どもたちにとっては、ラザロは将来なりたい自分であり、ラザロにとっては、子どもたちはかつての自分だった。貧しい子どもたちと大スターという関係ではなく、スラム街出身の彼らが同じ立場でリアルな関係性を築いてくれたことは、本当に素晴らしかったよ。

(取材・文=宮川翔)

■公開情報
『ストリート・オーケストラ』
8月13日(土)ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次ロードショー
監督・脚本:セルジオ・マシャード
出演:ラザロ・ハーモス、カイケ・ジェズース、サンドラ・コルベローニ
特別出演:サンパウロ交響楽団、エリオポリス交響楽団
原題:Tudo Que Aprendemos Juntos
2015年/ブラジル映画/103分/カラー/シネスコ/5.1chデジタル/字幕翻訳:蓮見玲子
(c)gullane
公式サイト:gaga.ne.jp/street

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