『X-MEN』最新作は過去作と何が違う? “家族愛”と“恋愛”が強調された娯楽大作に

『X-MEN』最新作の変化を読む

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 本作に於いて、もう一つ重要なテーマになっているのが“親子愛”である。身分を偽って平和に暮らしていたマグニートーを襲った悲痛な運命もさることながら、実はマグニートーには息子が居たというコミックのファンの間では周知の事実であった事柄も、本作で初めて描かれる。それが誰であるかはあえて伏せておくことにするが(余談だが、そのキャラクターは『X-MEN』シリーズだけでなく、大人の事情で共演できないコミック版の『アベンジャーズ』シリーズにも登場している)、会ったことのない実の父親を救うために、自らの能力を駆使して戦う姿は本作の最大の見せ場にもなっている。ブライアン・シンガー監督曰く、二分間のシーンを一か月半かけて撮影したという凄まじい映像は、ファンならずとも必見だ。

 そして、かつてミュータントと接触し、恋人同士となったCIAエージェントのモイラ・マクタガート(ローズ・バーン)が再登場する。プロフェッサーX自らの選択によって、愛し合っていたころの記憶を消去し、『ファースト・ジェネレーション』から引きずってきた彼らの恋愛にも、見事に決着をつけている。この二人の切ないラブストーリーは、号泣必須だ。

 今回、シリーズを完結させるにあたって、ブライアン・シンガーはあえて今まで貫いてきた、人類対ミュータントという構図をメインに持ってきていない。迫害を受けるマイノリティというテーマが、若干重くなりすぎるという事も意識しているように見受けられるが、人類を滅亡させようとする最古のミュータント対X-MENの闘いというスケールの大きなエンターテインメント性を前面に押し出し、娯楽大作としての面を強調している。

 本国の一部のファンからは“詰め込みすぎ”という辛い意見も出ているが、観る側がどのキャラクターを中心に観ていくかによって、その分何度も楽しめるとも考えられるのではないだろうか。

■鶴巻忠弘
映画ライター 1969年生まれ。ノストラダムスの大予言を信じて1999年からフリーのライターとして活動開始。予言が外れた今も活動中。『2001年宇宙の旅』をテアトル東京のシネラマで観た事と、『ワイルドバンチ』70mm版をLAのシネラマドームで観た事を心の糧にしている残念な中年(苦笑)。

■公開情報
『X-MEN:アポカリプス』
8月11日(木・祝) TOHOシネマズ スカラ座ほか3D/2D全国ロードショー
監督:ブライアン・シンガー
出演:ジェームズ・マカヴォイ、マイケル・ファスベンダー、ジェニファー・ローレンス、オスカー・アイザック
配給:20世紀フォックス映画
(c)2016 MARVEL (c)2016 Twentieth Century Fox
公式サイト:http://www.foxmovies-jp.com/xmen/

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