遠藤憲一、仲村トオル、渡部篤郎……夏ドラマに見る“理想の上司”像の変化

 理想の上司像を探るうえで、欠かせないのが“刑事もの”だ。夏ドラマの中で注目したいのは、『ON 異常犯罪捜査官・藤堂比奈子』での警視庁刑事部捜査課班長のベテラン刑事、厚田巌夫(渡部篤郎)。猟奇殺人事件に異様な興味を抱く新人刑事・藤堂比奈子(波瑠)と個性的なメンバーたちが難解な猟奇殺人の解決に挑む話で、厚田は藤堂を捜査課に抜擢した上司であり、班に属する刑事たちに心配りを欠かさないリーダー。殺人事件を捜査する司令塔の役目もあるが、心に闇を抱えるメンバーのケアも現段階での重要な役目として担い、今のところ冷静沈着で理想的な上司を演じている。ただ、今まで冷静かつ狂気な役を多く演じてきた曲者俳優の渡部篤郎なだけに、バツイチキャラも何か引っかかり、今後の展開次第ではどう豹変するか分からなく、最後まで気が抜けない。猛獣たちをまとめあげるには、自身もそれ以上の猛獣である必要があるだろう。

理想の上司=理想のドラマ?

 夏ドラマから理想的な上司役を3人挙げてみると、いま求められている上司は、単に“俺について来い”というタイプではなく、アプローチの仕方は違えど、後輩への気配りができるタイプが目立つ。また、昨今の若手社員が苦手だとされているコミュニケーション能力に長けているのも特徴的だ。主人公がアクの強いキャラクターだけに、よりその手腕が試されるところだろう。ドラマにおける上司は、いつの時代もストーリーを推し進めるための重要なファクターであり、主人公を引っ張る存在でもある。そのため、上司役の魅力が、ドラマの仕上がりにも大きく影響するはずだ。そうした視点で紹介した作品を鑑賞すると、学ぶところが多いかもしれない。

(文=本 手)

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