笑って泣けるホラー『死霊館 エンフィールド事件』のワイルド・スピード的方法論

『死霊館 エンフィールド事件』

 ワン監督は恐らくここで何かを掴んだのだろう。その何かとは……、ワイルド・スピード的な方法論、つまり「ワイスピメソッド」とも言うべきものである。つまり、驚異的なテンポの良さと、友情の尊さという普遍的なテーマを主題に置き、その友情が最高に高まる瞬間を音楽で印象的に盛り上げるやり方だ。そう思って見ると、本作の随所にワイスピ的な部分が確認できる。ウォーレン夫妻や、心霊現象に苦しむイギリスの絆を感じさせる描写は、明らかに前作より強くなっている。この「ファミリー感」はワイスピのそれに近い。さらに、特筆すべきは音楽の使い方である。本作ではエルヴィス・プレスリーの『好きにならずにいられない』が使われているが、これがワイスピの『See You Again』にも勝るとも劣らないエモーショナルなシーンを作り上げている。それに、心なしかウォーレン旦那は前作以上にタフガイになっているし、クライマックスは、ほとんどアクション映画のテンションだ。劇中でチラっと出てくる車を走らせるシーンも、若干ワイスピっぽくカッコいい撮り方をしている。

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 本作はワイスピのノリがあるホラー映画である。もちろん、このようなワイスピのノリを持ち込んでおきながら、怖いところはちゃんと怖い。しかも、人を選ぶグロテスクなシーンもほとんどなく、家族やカップルで見るのにも最適だろう。本作は、怖くて、笑えて、泣ける、極上のエンタテイメント映画である。まさに夏休みにピッタリの映画だと言えよう。

■加藤ヨシキ
ライター。1986年生まれ。暴力的な映画が主な守備範囲です。
『別冊映画秘宝 90年代狂い咲きVシネマ地獄』に記事を数本書いています。

■公開情報
『死霊館 エンフィールド事件』
7月9日(土)新宿ピカデリーほか全国公開
監督:ジェームズ・ワン
原案:チャド&ケイリー・ヘイズ、ジェイムズ・ワン
脚本:チャド&ケイリー・ヘイズ、ジェイムズ・ワン、デイビッド・レスリー・ジョンソン
出演:ベラ・ファーミガ、パトリック・ウィルソン、フランシス・オコナー、マディソン・ウルフ、フランカ・ポテンテほか
配給:ワーナー・ブラザース映画
2016/アメリカ/シネスコ/デジタル/原題:The Conjuring 2 
(c)2016 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC ALL RIGHTS RESERVED
公式サイト:www.shiryoukan-enfield.jp

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