小泉今日子&二階堂ふみW主演『ふきげんな過去』はなぜ“違和感”を残す? 前田監督インタビュー

『ふきげんな過去』インタビュー

「映画自体が日常の違和感として成り立つ」

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ーー前作の『ジ、エクストリーム、スキヤキ』もですが、前田さんの作品は見終わった後にどこかモヤっとする部分が残りますよね。

前田:映画やドラマは行動の動機が明確化されがちです。でも、実際に現実で起こっている事件は明確な理由なんてよくわからないんですよ。警察が事件の概要や動機を発表するけど、本当にそんな理由なのか、と疑問に感じることも多いです。人ってどうしても物事を理解したがるから、言葉にしたくなるんでしょうけど、映画ではなんとなくわかるくらいが丁度いいと僕は思っていて、そういう部分は残すようにしてます。

ーーどこか違和感を覚える映画で、特にサトエ(兵藤公美)が背負っている赤ん坊が人形だったのも奇妙でした。

前田:僕としては、人形でもなんでも、赤ちゃんとして見てもらえればよかった。そもそも、映画に登場する人たちはすべて虚構ですよね。実際には名前も違うし、家族でもない。それと同じで人形も嘘をついています。ただ、観ている人は人形であるにも関わらず、ちゃんと赤ちゃんとして認識する。記号的になにかを解釈していく感覚って、映画だけでなく芸術全般で言えることだと思っていて、そういう違和感はわざと作るようにしています。巨大なワニが運河に住んでいるという設定も、もし現実に起きたら違和感を感じるけど、ありえなくもない話ですよね(笑)。映画の中に入り込んで追体験するのも大切だと思いますが、その映画自体が日常の違和感として成り立つような作品も必要なのかなって。

ーー「人間は言葉でできている」「死ぬか生きるかなんて言葉でしょ」など、印象的なセリフも多かったのです。セリフには前田さんの死生観などが反映されているのでしょうか?

前田:命が尽きる尽きないは絶対的なことに思えますが、実際はただの認識でしかないと思っています。たとえば死体が転がっていても、それを見ている人が寝ていると思えば、見ている人の中では生きていることになる。逆に果子の中の未来子も、未来子が目の前に現れるまでずっと死んでいたわけで。少なくとも、その人の言葉や認識の違いで物事は変化していくものだという風に、僕は捉えていますね。

(取材・文=泉 夏音)

■公開情報
『ふきげんな過去』
公開中
出演:小泉今日子、二階堂ふみ、高良健吾、山田望叶、兵藤公美、山田裕貴、大竹まこと、きたろう、斉木しげる、黒川芽以、梅沢昌代、板尾創路
監督・脚本:前田司郎
主題歌:佐藤奈々子「花の夜」
製作:「ふきげんな過去」製作委員会
企画:キングレコード
制作・配給:東京テアトル(創立70周年記念作品)
2016年/日本/120分/5.1ch/ビスタ/カラー/デジタル
(c)2016「ふきげんな過去」製作委員会
公式サイト:fukigen.jp

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