佐津川愛美こそ2016年のホラークイーンだ! 『貞子vs伽椰子』『ヒメアノ〜ル』で見せた戦慄

佐津川愛美は2016年の“ホラークイーン”

 あらゆるアプローチからホラーへの演技を磨いてきた彼女は、2016年を代表する“ホラークイーン”と呼ぶに相応しい。今回の『貞子vs伽椰子』では、目に見えない呪いに怯えるのと同時に、その呪いによって豹変していく人物を目の当たりにするように、死者と生者両方からの恐怖を味わう。徐々に追い詰められて憔悴していくキャラクターは、これまでの経験があってこそ成り立っているのだ。

 演者にとって新しい演技の方法論を次から次へと手に入れていくことは重要なことである。彼女は映画からドラマや舞台と、これまで積み重ねてきた幅広いキャラクターをすでにきっちりと掌握して、それを巧みにアウトプットする能力を、ここ数年で携えたとみていいだろう。デビュー間もない頃のドラマ『ギャルサー』で演じたような派手なタイプは、昨年の映画『グラスホッパー』で。『笑う大天使』のときにハマっていたお嬢様タイプのキャラは『横道世之介』に反映された。それだけでなく、『空飛ぶ金魚と世界のひみつ』や『惑星ミズサ』、『新しい戦争を始めよう』といった低予算インディーズ映画への出演も積極的に行い、常に新しいキャラクターを獲得していこうとする彼女の、演技に対する真っ直ぐな姿勢は、もっと評価されるべきだろう。

 今年はこの後も7月2日公開の映画『全員、片思い』や、9月10日公開となる東陽一監督の最新作『だれかの木琴』が控え、フジテレビ系列では毎週土曜日の<オトナの土ドラ>枠で放送されている『朝が来る』にも出演するなど、ついにブレイクのチャンスが訪れたのだ。これからさらに女優として開眼していくことは間違いないだろう。

■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

■公開情報
『貞子vs伽椰子』
6月18日(土)全国ロードショー
監督・脚本:白石晃士
出演:山本美月、玉城ティナ、佐津川愛美、田中美里、甲本雅裕、安藤政信
制作・配給:KADOKAWA
(c)2016「貞子vs伽椰子」製作委員会
公式サイト:http://sadakovskayako.jp

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アクター分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる