『ゆとりですがなにか』第九話に見る、宮藤官九郎の人間観 ゆとり世代の成長が示すもの

『ゆとり〜』第九話が示すクドカンの人間観

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『ゆとりですがなにか』第九話より

 まりぶたち道上家が立ち直る姿を描く一方で、丁寧に追いかけているのが坂間家に嫁入りした宮下茜の心境だ。

 会社を辞めた茜は坂間家にすぐに馴染んで楽しく暮らしていた。しかし、心の奥底には“結婚したら自分がからっぽのなるんじゃないか”という不安が横たわっていた。退職の挨拶の場面で、別の女性社員が仙台支社の担当にあっけなく決まる姿や、結婚式の招待状の束の中に、一夜を共にした上司の早川道郎(手塚とおる)が欠席に丸をした葉書をちらっと見せることで、彼女の不安を想像させる演出が効いている。

 一番しっかりとしているように見えて、実は揺れている茜の心境を丁寧に追いかけることで、女性のキャリアデザインの困難さにまで踏み込んでいるのは、本作の射程の広さだと言えよう。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■番組情報
日本テレビ系日曜ドラマ『ゆとりですがなにか』
毎週日曜 22:30スタート(最終回は6月19日放送)
出演:岡田将生 松坂桃李 柳楽優弥 安藤サクラ 吉田鋼太郎
脚本:宮藤官九郎
「ゆとりですがなにか」公式サイト
(C)日本テレビ

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