興行成績から読み解く、二階堂ふみ×山﨑賢人W主演作『オオカミ少女と黒王子』の実力

『オオカミ少女と黒王子』の実力を読み解く

 最後に、作品テーマの観点から見てみよう。というのも、十把一絡げに少女マンガ原作実写化作品と言っても、そこには明確にテーマのトレンドが存在していることを見過ごしてはいけない。現在の流行はズバリ、“ドS系イケメン男子”モノ。そのトレンドを強く印象づけたのは、160スクリーンという中規模の公開ながら、2016年2月の公開週の土日2日間で動員15万7680人、興収1億9070万5900円をあげてその週の1位となった『黒崎くんの言いなりになんてならない』のスマッシュヒットだ。公開規模がかなり違うので単純な比較はあまり意味がないが、動員でその140%以上を記録した今回の『オオカミ少女と黒王子』のヒットによって、日本の各映画会社は「“ドS系イケメン男子”モノはまだまだいける!」と判断したに違いない。きっと水面下では、“ドS系イケメン男子”が登場する少女マンガの原作権争奪戦が繰り広げられていることだろう。ドSでもイケメンでもない自分にとっては、肩身の狭い日々がまだ当分続きそうだ。

■宇野維正
音楽・映画ジャーナリスト。「リアルサウンド映画部」主筆。「MUSICA」「クイック・ジャパン」「装苑」「GLOW」「NAVI CARS」ほかで批評/コラム/対談を連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮新書)発売中。Twitter

■公開情報
『オオカミ少女と黒王子』
新宿ピカデリーほか全国公開中
出演:二階堂ふみ、山﨑賢人、鈴木伸之、門脇麦、横浜流星、池田エライザ、玉城ティナ、吉沢亮、菜々緒
原作:八田鮎子作「オオカミ少女と黒王子」(集英社「別冊マーガレット」連載)
監督:廣木隆一
脚本:まなべゆきこ
音楽:世武裕子
主題歌:back number「僕の名前を」(ユニバーサル シグマ)
配給:ワーナー・ブラザース映画
(c)八田鮎子/集英社 (c)2016 映画「オオカミ少女と黒王子」製作委員会 
公式サイト:ookamishojo-movie.jp

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