97年生まれのブレイク有力株 高月彩良が『重版出来!』で見せた演技の“実力”は?

 今回のドラマで彼女が演じている東江絹というキャラクターは、抜群の画力を持ちながらも自分の才能に自信が持てない大学生で、サークルではBL漫画に勤しむ。実年齢より上の役柄には違いないが、特別大人びた印象を必要としない、いわば等身大の彼女の演技を見られる役柄である。周りからの後押しで意を決して同人誌即売会の会場に設けられた出版社ブースに出向いた東江は、黒沢心と巡り会い漫画家を志す。一度は就職するか漫画家を目指すかの選択に迫られ、すぐに漫画家としてデビューできる可能性に頼った彼女は、まんまと“新人ツブシ”の手中にはまってしまうわけだ。

 第6話ではその“新人ツブシ”安井の誕生秘話が物語の中心となり、それと同時に、東江絹の漫画家としての大きな前進が描かれていた。構図や展開に不安を抱えながらも編集者に相談できず、ひたすら孤独に締め切りと戦い続ける彼女を救ったのは、またしても主人公・黒沢心の超ポジティブな言葉の数々であった。ラストで安井から新しいコミカライズの仕事を提案された彼女は、その仕事を断る。そして出版社の前で黒沢に会うと、彼女は一生懸命自分に向き合ってくれた黒沢から離れたことをずっと後悔していたと語る。すると黒沢は彼女の手を取りこう言う。「離した手は、もう一度繋げばいいんですよ」。

 この第6話で、新人漫画家・東江絹の物語はひと段落したことになるだろう。この後、彼女が自分の書きたい漫画を書いて、再び黒沢心のもとを訪れるエピソードが登場することに淡い期待をしながら、最終話までの展開を楽しもうと思う。まさに、劇中で主人公が掲げる「自他共栄」という言葉に相応しい、漫画家と編集者の物語であった。

■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

■放送情報
『重版出来!』
毎週火曜22時から放送中
出演:黒木華、オダギリジョー、坂口健太郎、荒川良々、濱田マリ、野々すみ花、永岡佑、前野朋哉、中川大志、高月彩良、武田梨奈、最上もが(でんぱ組.inc)、富山えり子、小日向文世、生瀬勝久、滝藤賢一、要潤、永山絢斗、ムロツヨシ、高田純次、安田顕、松重豊
原作:松田奈緒子「重版出来!」(小学館「月刊!スピリッツ」連載中)
脚本:野木亜紀子
演出:土井裕泰、福田亮介、塚原あゆ子
公式サイト:http://www.tbs.co.jp/juhan-shuttai/

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