デーブ・スペクターが語り尽くす『ハウス・オブ・カード』の魅力「史上ベストドラマの5本に入る」

D・スペクター『ハウス・オブ・カード』語る

『ハウス・オブ・カード』は各話観終わるごとに、急に孤独感が生まれてくる

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ーー近年の海外ドラマと比べても、頭一つ飛びぬけているという印象ですか?

デーブ:近年、『ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア』に始まり、『ボードウォーク・エンパイア 欲望の街』や『ゲーム・オブ・スローンズ』など、アメリカの放送局HBOが素晴らしいドラマを何本も作っていて、それらの作品が海外ドラマのスタンダードになっていました。でも、『ハウス・オブ・カード』はそれらの作品と比べてもまた別格。2013年当時はまだ新しかったNetflixというストリーミングサービスを通して、新しい基準を作っちゃったんですよね。先ほど挙げた『ザ・ホワイトハウス』もうそうですが、ガス・ヴァン・サントが初めてテレビドラマを手がけた『BOSS/ボス 権力の代償』など、過去にも政治ネタを扱ったドラマは結構あるんですけれど、ここまでよくできたものはないですよ。素晴らしい作品がたくさんあった1950年代~60年代が“海外ドラマの黄金時代”でしたが、今は2度目の波が来ている。『X-ファイル』や『24』など、単品で流行った作品はいくつかありましたけど、ブームは長い間なかった。で、Netflixなどのストリーミングサービスが台頭してきてから、質のいいドラマがたくさん出てきて、再び海外ドラマブームが訪れたんです。でも、それが逆にジレンマでもある。

ーーというと?

デーブ:例えば、『ゲーム・オブ・スローンズ』は空想の世界を描いているので、「『ロード・オブ・ザ・リング』みたいなよくできている作品」って言えば、「あぁ、なるほど」という感じで割とイメージが湧きやすいじゃないですか。『ハウス・オブ・カード』は、表面的に見ただけだと、ただのアメリカの政治ドラマかって思って身構えてしまう人が多い。作品の素晴らしさを伝えようとしても、語れないレベルの作品だし、あまりしつこく言うと、観る気をなくしちゃう人もいる。『スター・ウォーズ』とか『タイタニック』状態ですよ。だからプロモーションもすごく難しい作品だと思います。とにかく観ないとはじまらない作品なので。

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ーー確かに日本での一般的な知名度もまだそこまで高くはありませんね。

デーブ:日本で海外ドラマって言うと、地上波が中途半端に流したりするので、視聴者も裏切られちゃうんですよね。しかもほとんどリアルタイムでやらないので、いつどのドラマが放送されるのか、次のシーズンはいつ始まるのか、わからなくなってしまう。CSとかでまとめて観れたりもしますけど、ろくに宣伝しないから、放送していること自体もわからなかったりする。と言って、DVDやブルーレイを買おうと思っても、値段が高いじゃないですか。だから、ヒットしたドラマが何シーズンも続いてしまうと、すごく不利。だからやっとストリーミングで全シーズン観れるようになったのは、非常に大きいですよ。ましてや『ハウス・オブ・カード』はNetflixのオリジナルドラマですから、おそらく今後続くシーズンも日本でリアルタイムで観れるようになるんじゃないですかね。DVDを買ったり借りに行ったりせずにすむし、わざわざどのチャンネルでいつ放送されるのかを調べたりする必要もなく、気軽にストリーミングで観れるようになったのは、本当にありがたいです。

ーー気軽に1話だけを見たり、まとめてイッキ見をしたりと、こちら側が選択ができるようになったのも大きいですね。

デーブ:『ハウス・オブ・カード』は各話を観終わるごとに、急に孤独感が生まれてくるんですよ。「もう終わっちゃったのか」っていう。こちら側は、終わってほしくない。だいたい1話50分ぐらいですけど、ラストシーンが近づいてくると、もう悲しくてしょうがなくなっちゃう。例えるなら、ディズニーランドの閉園時間が近づいてくる感じ。そんなふうに思うことができる、非常に珍しい作品ですね。ちょうど今アメリカ大統領選の時期ですし、テロやTPPや中国といった、日本人にとっても身近な問題も描かれているので、勉強にもなります。イッキ見だと疲れてしまう人もいるだろうし、1話だけ観て1週間とか間をあけてまた観るとついていけなくなっちゃ人もいると思うので、最初だけは2~3話続けて観るのがオススメですね。非常に語り甲斐のある作品なので、観終わったら、友人や知り合いにも勧めてもらって、いろいろと語り合っていただきたいです。

(取材・文=宮川翔)

■配信情報
『ハウス・オブ・カード 野望の階段』
Netflixにて全シーズンを一挙独占配信中
(c)Netflix. All Rights Reserved.
Netflix:https://www.netflix.com/jp/

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