人生は何度でもやり直せるーーインド舞台の『マリーゴールド・ホテル』続編が教えてくれること

『マリーゴールド・ホテル』続編レビュー

 私自身、旅で人生が大きく変わった。あの時、旅に出なければ、あの地にいなければ、あの人たちに出会わなければ、何も手に入れられなかった、そう思い返すこともある。旅をして、人は人と出逢い、新たなものに触れ、自分を見つめ直すこともできる。そしてそこから、また新たな世界が生まれる。旅に出ると、自分を解放し、流れに身を任せることこそが、本来の自分の活かし方なのではと実感させられることもある。

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 マリーゴールド・ホテル。歳を重ねて来た彼らの姿からは、余裕を感じる。ホテルの共同マネージャーとなったマギー・スミス演じるミュリエルの、人生を達観したような最後の言葉が、なんとも魅力的だった。「流れに身を任せたら、人生が楽しくなった。人生、今が一番楽しい」そして、上手くいかない状況にあがく若き支配人ソニーの今を、ミュリエルは俯瞰する。今は若くて気付かないだろうけれど、焦っても仕方がない、自然に進みなさいと。

 私もかつては生き急いでいた。ただ中国で「順其自然」(自然に任せる)、という言葉に出会って変わった。すべては自然の巡り合わせだ、そう思うと気が楽になったし、一つ一つの出来事に、わざわざ悲嘆することもなくなった。人生最後まで、誰も結果なんて分からない。

 旅は、無限であることを教えてくれる。人生この先、何が待ち受けているのかは分からない。今ここでつまらない生活をしていたって、来週旅立つ先で、もしくは自分が歳を取った時に訪れる地で、大きな変化が訪れるかもしれない。

 これは決してありえない夢物語ではない。彼らのような柔軟な心を持ってさえいれば、いつでも人は変われることを示しているのであろう。私ももしこんなホテルが実在するのであれば、今すぐインドに旅立ち、こんな素敵な人生の先輩たちと出逢いたい、そう思った。

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■大塚 シノブ
5年間中国在住の経験を持ち、中国の名門大学「中央戯劇学院」では舞台監督・演技も学ぶ。以来、中国・香港・シンガポール・日本各国で女優・モデルとして活動。日本人初として、中国ファッション誌表紙、香港化粧品キャラクター、シンガポールドラマ主演で抜擢。現在は芸能の他、アジア関連の活動なども行い、枠にとらわれない活動を目指す。
ブログ:https://otsukashinobu5.wordpress.com/

『マリーゴールド・ホテル 幸せへの第二章』
3月4日(金)TOHOシネマズ シャンテ他 全国ロードショー
監督:ジョン・マッデン
キャスト:ジュディ・デンチ、マギー・スミス、ビル・ナイ、デヴ・バテル、リチャード・ギア
2014年/イギリス=アメリカ合作/英語/カラー/シネマスコーブ/123 分/
原題:The Second Best Exotic Marigold Hotel
日本語字幕:戸田奈津子
配給:20 世紀フォックス映画
(C)2014 Twentieth Century Fox. All Rights Reserved.
公式サイト:marigold-hotel.jp

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