ティーンムービーはローリスク・ハイリターン!? 『黒崎くん』の驚くべき効率の良さ

 もう一つ。『黒崎くんの言いなりになんてならない』の映画版を観ればわかるように、学園&寮モノである本作は、登場人物が極端に少なく、こういう作品でしばしば「重し」のような存在として起用されることがある「大人の役者」の存在も不在で、手間と費用がかかるモブシーンもほとんどなし。つまり、ほとんどのシーンが、中島健人、小松菜奈、千葉雄大の3人のみで成り立っているのである。そのあまりに限定されたミニマムな空間では、「ヌーヴェルヴァーグ初期の恋愛映画かよ!」という自分の当て外れのツッコミも虚しく響くのみである。いや、小松菜奈のファム・ファタールとしての存在そのものの輝きは本作においても健在なのだが、往年のファム・ファタールといえばドSと相場が決まっていた。ところが、本作の小松菜奈はタイトルからも推察できる通り、実際は黒崎くんの言いなりになってばかりの超ドM設定なのだ。あぁ……(ため息)。

 なお、2位に後退した『オデッセイ』だが、週末2日間の興収は2億1367万1300円と、一応興収では4週連続1位であったことを最後に付け加えておく。

■宇野維正
音楽・映画ジャーナリスト。「リアルサウンド映画部」主筆。「MUSICA」「クイック・ジャパン」「装苑」「GLOW」「NAVI CARS」ほかで批評/コラム/対談を連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮新書)発売中。

■公開情報
『黒崎くんの言いなりになんてならない』
公開中
出演:中島健人、小松菜奈、千葉雄大、高月彩良、岸 優太、
監督:月川翔
脚本:松田裕子
原作:マキノ『黒崎くんの言いなりになんてならない』(講談社「別冊フレンド」連載中)
制作プロダクション:日活 
制作協力:AOI Pro. 
配給:ショウゲート
(C)「黒崎くんの言いなりになんてならない」製作委員会 (C)マキノ/講談社
公式サイト:kurosakikun-movie.com

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