正月映画のダークホースとなった『orange –オレンジ-』、その強さの秘密

 しかし、本作が多くの人の予想を超える大ヒットとなった最大の要因は、その公開タイミングにあったと思う。当たり前のことだが、世の中には『スター・ウォーズ』にも『妖怪ウォッチ』にもまったく興味がない層というのが一定数いる。今年の正月興行では、そのあまりも強い2作と公開タイミングが重なることを避けた作品が多かったせいで、結果として『orange-オレンジ-』が女性層、若年層の観客を根こそぎさらっていったというのが実態なのではないか。

 近年のティーン向け映画のヒット作と比べても、(原作由来の)「話のおもしろさ」と「キャスティング」以外、『orange-オレンジ-』には映画として取り立てて優れたところがないというのが自分の正直な感想なのだが、逆に言えば「話がおもしろく」て「キャスティング」が興味を引けば、現在の日本の映画界における商業作品としてはそれで十分なのだろう。そこに、大作をあえて避けることはしなかった絶妙な公開タイミングが重なって、『orange-オレンジ-』は2016年最初の実写日本映画大ヒット作となった。

■宇野維正
音楽・映画ジャーナリスト。「リアルサウンド映画部」主筆。「MUSICA」「クイック・ジャパン」「装苑」「GLOW」「NAVI CARS」ほかで批評/コラム/対談を連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮新書)、2016年1月16日発売。

■公開情報
『orange-オレンジ』
公開中
監督:橋本光二郎
原作:高野苺
製作:市川南
共同製作:戸塚源久、山本浩
出演者:土屋太鳳、山崎賢人、竜星涼、山崎紘菜、桜田通
配給:東宝
公式サイト:orange-movie.com

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