伊藤沙莉と佐久間由衣、ガールズラブをどこまで描ける? 初主演『トランジットガールズ』への期待

 主人公・小百合を演じるのは9歳の頃からドラマを中心に活躍している伊藤沙莉。今回が初めてのドラマ主演となる彼女は、おとなし目のルックスとハスキーボイスのギャップで、決してアイドル性が高くないだけに、これまでは主人公の同級生役などの脇を固めることが多かった印象が強い。しかしながら、アイドル全盛時代の現在でアイドル性の高い女優を探すことは難しいことではない。逆に、彼女のように街の中で見かけても特別気にかけることもないが、一度まじまじと見つめてみると忘れがたいインパクトを残す女優を見つけ出すことのほうが稀有である。何よりも彼女の強みは、今回のドラマの主人公として相応しい、都会的な空気に浸透するクールさが垣間見えることである。

 もう一人の主人公である、義姉ゆいを演じるのはViViの専属モデルである佐久間由衣。これまでモデル業をメインに行ってきた彼女は、昨年公開された『人狼ゲーム ビーストサイド』以来となる演技経験となり、こちらも主演級の演技は初めてとなる。まだ表情の作り方にぎこちなさが残るが、その出で立ちに何とも言えない神秘的な魅力を感じる。本作以降も演技を続ける機会があり、彼女のモデルとしての強みを全面に出せる配役さえ得られれば、水原希子級の大化けも期待できるのではないだろうか。

 何より一番驚いたことは、劇中では3歳差の義姉を演じる佐久間が、実際には小百合役の伊藤よりも年下ということである。たしかに佐久間は現役モデルらしい大人びた風貌で、伊藤も実年齢よりも何だか若く見えるということもあって、決してミスキャスト感は出ていない。姉妹・兄弟を演じる役者の実年齢が役柄と逆転していることはよくあることではあるが、物語の中心に姉妹・兄弟があり、かつ年齢的なギャップを感じやすい世代のそれを演じさせる上では、なかなか挑戦的な試みに思える。

 土曜深夜枠という観落としやすい時間帯で、かつ他のドラマより遅い11月から始まったというハンデはあるものの、25分という短さだけに一気に追いかけることも難しいことではないだろう。後半4話で物語をどう帰結させるのか、注目したいところである。

■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

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