『ハンガー・ゲーム』はどうして日本で当たらなかったのか? シリーズ完結を機に考える

『ハンガー・ゲーム』日本と海外の温度差

 『ハンガー・ゲーム』、『ダイバージェント』、『メイズ・ランナー』と続いてきた「ファンタジー/SF系ヤング・アダルト小説の映画化作品」が日本で当たらない理由は二つあると考える。一つは、日本では既にこのジャンルの役割を邦画の「マンガ原作の映画化作品」が果たしていて、メインストリームにおいて余剰マーケットが存在しないこと。もう一つは、日本ではヤング・アダルトならぬ本当の意味でのアダルト層の観客に届かなかったこと。今やハリウッド・ナンバーワン女優となった主演のジェニファー・ローレンスをはじめ、ジュリアン・ムーア、フィリップ・シーモア・ホフマン(本作が遺作となった)、ドナルド・サザーランドと錚々たる役者陣が揃っていることからもわかるように、『ハンガー・ゲーム FINAL: レボリューション』の世界的ヒットを支えているのは必ずしもティーン層だけでなく、そこから広がっていった幅広い観客層だ(アメリカではヤング・アダルト小説にはまる大人が増えていることが、近年の大きな文化的トピックにもなっているという)。

 では、今後「ヤング・アダルト小説の映画化作品」を日本でヒットさせるためには、アダルト層にアピールすることが重要かというと、そう簡単でもないだろう。やはり、あくまでもコアとなるティーン層の支持があって、そこから広がっていくという形でないと、全世代的にアピールしていくことは難しいのではないか。そういう意味では、むしろ現在日本で量産されている少女マンガも含む「マンガ原作の映画化作品」を、ティーン層だけでなくアダルト層や海外の観客層の観賞にも耐えうる作品として真摯に作り上げていくことが、『トワイライト』や『ハンガー・ゲーム』の大成功から日本の映画界が学ぶべきことなのではないか、と前向きの提案を最後にしておきたい。

■宇野維正
音楽・映画ジャーナリスト。「リアルサウンド映画部」主筆。「MUSICA」「クイック・ジャパン」「装苑」「GLOW」「NAVI CARS」「ワールドサッカーダイジェスト」ほかで批評/コラム/対談を連載中。今冬、新潮新書より初の単著を上梓。Twitter

■公開情報
『ハンガー・ゲーム FINAL: レボリューション』
全国公開中
配給:KADOKAWA
TM&(C)2015 LIONS GATE FILMS INC.ALL RIGHTS RESERVED.
公式サイト:http://www.hungergames.jp/

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「興行成績一刀両断」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる