菊地成孔がアルトマン映画のトークショーに登壇

アルトマン映画、菊地成孔トークショーレポ

 続いて菊地氏は、今回のドキュメンタリー映画のテーマ曲となった「Let's Begin Again」という楽曲についても解説。「映画の最初と最後に「Let's Begin Again」というジャズのスタンダードみたいな曲が流れますけど、それがまるでアルトマンの人生をトレースしているかのような、とても気の利いた歌詞なんです。“もう一回やり直しましょう”っていう。この曲の作詞作曲をアルトマンがやっているというのは知っていたんですけど、死ぬ直前に作ったんだと思っていたんです。自分の人生を振り返って、こういう歌詞ができたんだと。だけど、これがなんと、死ぬ直前どころか、40年代に作っていて、すでに自作のなかで何回も繰り返し歌われている曲だということで。だから、逆に言うと40年代に先に歌を作ってしまって、その歌のように人生を生きたという言い方もできなくもない。そこにびっくりしたんです」。ちなみに菊地氏曰く、劇中で流れる同曲は、「90年代のジャム・バンド・ブームのときに活躍していた“メデスキ、マーティン・アンド・ウッド”のジョン・メデスキがピアノを弾いて、レイチェル・ヤマガタさんという日系クオーターの歌手の方が歌っていて……非常に優れたトラックですよね」とのこと。今回のヴァージョンは、本作のために新録されたものであるという。

 そして最後、「今、アルトマン映画のビギナーであることは、すごく幸せなこと」、「20世紀の決定的な評価というものを一回ロンダリングして、新鮮な目でアルトマン映画を観ることができるから」と語った菊地氏は、今回のドキュメンタリーを観て、さらに興味を持った“アルトマン初心者”に向けて、アルトマンが調子の良かったディケイドである70年代の『M★A★S★H マッシュ』、『ロング・グッドバイ』、『ナッシュビル』という3本、そして90年代に撮られた『ザ・プレイヤー』、『ショート・カッツ』、『プレタポルテ』の3本を推薦。「今回のドキュメンタリーを観たあとなら、きっといろいろな感想があるはずです」としながら、約30分間のトークを終了した。

■公開情報
『ロバート・アルトマン/ハリウッドに最も嫌われ、そして愛された男』
YEBISU GARDEN CINEMAほかにて公開中
監督:ロン・マン
証言者:ジュリアン・ムーア、ブルース・ウィリス、ポール・トーマス・アンダーソン、エリオット・グールド、サリー・ケラーマン、ジェームズ・カーン、キース・キャラダイン、フィリップ・ベイカー・ホール、ライル・ラヴェット、マイケル・マーフィ、リリー・トムリンほか 
原題:Altman/カナダ/2014年/95分 
配給:ビターズ・エンド
(C)2014 sphinxproductions
公式サイト:www.bitters.co.jp/altman

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