予想外の大ヒット!? 桐谷美玲主演『ヒロイン失格』の勝因を考察

『ヒロイン失格』の勝因は?

 と、ここまでは今作が作品として成功している理由だ。しかし、作品として成功しているだけではヒットするとは限らない(特に日本映画ではそういうケースの方が少ない)。客席でのリアクションや、ロビーに飾られた出演者の等身大パネルの前で記念撮影をしている女子高生たちの姿を見ていると(「キモい」とか言わないでくださいね……)、主役の相手役を演じている2人の俳優、山崎賢人と坂口健太郎のキャスティングが見事に的中したのだということがよくわかった。

 男目線や大人目線からは、ついついこの手の少女マンガ原作映画だと主演女優にばかり気を取られてしまうが、往々にしてヒットの鍵を握っているのは相手役の男優の方だったりする。例えば昨年、能年玲奈(華麗なる復活をいつまでも待ってます!)は『ホットロード』と『海月姫』の2本のマンガ原作映画に主演したが、『ホットロード』は大ヒットを記録したのに、『海月姫』は大コケしてしまった。まぁ、作品自体も明らかに『ホットロード』の方がよくできてはいたが、そこまで大きな差がついた一つの要因は、実は『ホットロード』の観客のかなりの割合を相手役の登坂広臣(三代目J Soul Brothers)のファンが占めていたからだという分析もある。

 そもそも、女性マンガ原作映画の観客の9割は女の子。普通に考えてみれば、対マスコミ的に作品のイメージを担っているのは主演女優でも、興行の内実を担っているのは相手役の男優というのは当たり前のことなのかもしれない。もっとも、主演女優が「同性から好感を持たれていること」というのがヒットの大前提。そういう意味で、今作における桐谷美玲の完全にメーターを振り切ったコメディエンヌぶりは、同性から見ても文句のつけどころがないものだろう。

■宇野維正
音楽・映画ジャーナリスト。「リアルサウンド映画部」主筆。「MUSICA」「クイック・ジャパン」「装苑」「GLOW」「NAVI CARS」「ワールドサッカーダイジェスト」ほかで批評/コラム/対談を連載中。今冬、新潮新書より初の単著を上梓。Twitter

■公開情報
『ヒロイン失格』
9月19日(土)新宿ピカデリー他全国ロードショー
原作:幸田もも子『ヒロイン失格』(集英社マーガレットコミックス刊)
監督:英勉  脚本:吉田恵里香  音楽:横山克
主題歌:西野カナ「トリセツ」(ソニー・ミュージックレーベルズ/SMEレコーズ)
制作プロダクション:ダブ
配給:ワーナー・ブラザース映画
(C)2015 映画「ヒロイン失格」製作委員会(C)幸田もも子/集英社

公式サイト:http://heroine-shikkaku.jp
公式Twitter:@heroine_movie #ヒロイン失格
公式Instagram:https://www.instagram.com/heroine_shikkaku/

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