『ジョン・ウィック』でキアヌ・リーブス復活! 『マトリックス』スタント製作陣と生み出した“アクションの凄み”を解説

キアヌを復活させた『ジョン・ウィック』

専用ラボで開発されたアクション

20150919-jw-02th_.jpg

 

 興味深いことに、このアクションチームは専用ラボを持っているのだとか。「87Eleven」にはワイヤーやグリーン・スクリーン、モデルガン、特殊車輌、トランポリンをはじめとするあらゆる大掛かりなスタントの道具が揃っており、日夜アクション開発に情熱が注がれている。『ジョン・ウィック』に関しても、一体どのようなアクションが必要なのかを試行錯誤しながらの精力的な研究開発が進められた。

 さらにキアヌ自身もこの役づくりのために4か月前にわたってトレーニングを重ね、ジョン・ウィックの身体性や凄みを獲得していったという。このようにして接近戦における銃撃と格闘、さらにはカーアクションまで織り交ぜた、複雑かつユニークなコレオグラフィーが誕生したわけなのだ。

グラフィック・ノベルを思わせる語り口、世界観

20150919-jw-08th_.jpg

 

 本作を語る上で忘れてはいけないのが、まるでグラフィック・ノベルから立ち上がったかのような特殊な世界観である。そこにうごめく主人公ジョンはもちろんのこと、女殺し屋、マフィアのボス、そしてクセモノ俳優ウィレム・デフォーの起用など、いずれのキャラクターもその存在感がギラリと黒光り。こうして細部がとことん輝くのも、アクション、演出、演技のアンサンブルが極めて陰影の濃い相乗効果を生み出しているからである。

 さらに、殺し屋たちが疲れた身体をゆっくりと休ませるための謎の高級ホテルが登場したり、裏社会での仕事の対価には全て金貨が用いられたり、殺しをすると自ら遺体の始末屋まで手配しなければならないなど、風変わりな作法の数々もまた映画ファンの心をくすぐってやまない。

 ちなみにもうひとつ挙げるなら、エレクトロなサウンドが響くクラブでの銃撃戦や、鳴り響く黒電話、豪雨の中での死闘といった既視感あふれる映像はもしや『マトリックス』ファンへの目配せだろうか―——。いずれにしても楽しい。楽し過ぎる。

 かくしてキアヌ・リーヴスの復活を印象づける『ジョン・ウィック』は、北米公開からほぼ一年遅れでようやく日本に届けられる。すでに続編製作も決まっているという本作から革新的なアクションが生まれ、なおかつ新たなキアヌ伝説が始動していく様を、しっかりと見届けたい。

■牛津厚信
映画ライター。明治大学政治経済学部を卒業後、某映画放送専門局の勤務を経てフリーランスに転身。現在、「映画.com」、「EYESCREAM」、「パーフェクトムービーガイド」など、さまざまな媒体で映画レビュー執筆やインタビュー記事を手掛ける。また、劇場用パンフレットへの寄稿も行っている。Twitter

■公開情報
『ジョン・ウィック』(原題:JOHN WICK)
10月16日(金)、TOHOシネマズ新宿ほか全国公開
出演:キアヌ・リーブス、ウィレム・デフォー、イアン・マクシェーン
監督:チャド・スタエルスキ
製作:デヴィッド・リーチ
スタントコーディネーター/第二班監督:ダリン・プレスコット
公式サイト: johnwick.jp
Motion Picture Artwork © 2015 Summit Entertainment, LLC. All Rights
Reserved. © David Lee
配給:ポニーキャニオン R15+

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「作品評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる