『ラブライブ!』映画はなぜロングヒットした? さやわかが作品の構造から分析

「『ラブライブ!』や『ガールズ&パンツァー』は、"萌え"の対象である美少女アニメとしてはもちろん、アイドル映画やスポコン漫画としても楽しむことができます。だからこそ、同世代の女性にも響いたし、決してオタクではない一般の人々にも訴求したのでしょう。現在のアイドルカルチャーは、たとえばヘビーメタルの音楽性を取り入れたBABYMETALのように、従来のアイドルにはなかった様々な要素を盛り込むことで拡大してきましたし、メンバーとの疑似恋愛ではなく、彼女たちが努力する姿を応援するものとして発展しています。それと同じ構造が『ラブライブ!』にもあるのです」

 一方で、急速に人気が拡大したことにより、映画をスマートフォンで撮影するなど、マナーを守らない観客も目立つようになっているという。

「今回のムーブメントで、初めてこうしたアニメ映画に触れた観客も多かったのでしょう。そういう方が映画館での常識を知らずに、つい撮影してしまったのかもしれません。たとえばアイドルのライブ会場やコミケ会場などでは、いわゆる古参のファンがマナーを作り上げていて、観客たちの間で自浄作用が働いているケースが多いですが、今回は映画ということもあり、そうした社会性が機能しなかった面もあるのでは。そういう意味では、いわゆる"オタク"だから一般常識が欠けているという言い方はできないと思います。しかし今後も『ラブライブ!』が発展していくのであれば、アイドルカルチャーのようにファンたちが自主的にルールを守ったり、運営側がアナウンスを心がけるなどして、社会性を発展させていく必要があるかもしれませんね」

 現在のアイドルカルチャーの手法を応用して、幅広いファン層を獲得した『ラブライブ!』。カルチャーとしてより成熟すれば、さらに多様な要素を盛り込んだ美少女アニメのヒット作が次々と生まれていく可能性もあるかもしれない。

(文=松田広宣)

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