侍ジャパンが“漫画超え”すぎる……『おお振り』から『4軍くん』まで、WBCと比べて読みたい作品5選

WBCが終わっても野球を楽しめる漫画

 現在大活躍中のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)日本代表「侍ジャパン」がまるで漫画のようだ。

 “世界一の野球選手”といっても過言ではない二刀流・大谷翔平を筆頭に、メジャーリーグでも屈指のエース·ダルビッシュ有、さらに160km台のストレートを連発するパーフェクト投手·佐々木朗希、打線を見れば4番に本調子ではないものの史上最年少三冠王を獲得した村上宗隆と若手が台頭し、誰よりも「日本代表」の重みを感じながらプレーする“たっちゃん”ことラーズ·ヌートバーという外国籍のスターまでいる。

 その他、スターティングメンバーだけでなく、ベンチに座る選手や怪我等の事情で選考されなかった選手も含め、誰をとっても漫画の主人公のような強キャラばかり。「国の代表/オールスターとはそういうものだ」という見方もできるが、特に大谷翔平は一昔前ならフィクションでもやりすぎだと思われそうな“漫画超え”のプレイヤーだ。

 こんな選手とチームが出てきてしまっては、野球漫画も商売上がったり……かといえば、まったくそんなことはない。日本独自のカルチャーを多分に含む「学生野球」を中心に、いまも良作が数多く連載されている。

 例えば、「月刊アフタヌーン」で連載中の『おおきく振りかぶって』(ひぐちアサ)は綿密な取材のもと、高校野球を舞台に理論や細かな心理戦をじっくり描き、単行本にルール解説を収録するなど、現実の野球を観る楽しみも深めてくれる作品だ。さらに「モーニング」で連載中の『バトルスタディーズ』(なきぼくろ)は、名門・PL学園出身で甲子園への出場経験もある作者が、前時代的で厳しい野球部の姿を描いている。特に古い野球ファンには刺さる作品ではないだろうか。


 その意味では、あだち充の最新連載作品『MIX』も見逃せない。名作『タッチ』から約30年後の明青学園野球部を舞台とした作品で、こちらもあだち充らしいドラマとともに、伝統のあるスポーツとしての野球の素晴らしさを伝えてくれる。一方でフレッシュなものとしては、漫画配信サイト「少年ジャンプ+」で好評連載中の『忘却バッテリー』(みかわ絵子)は、記憶喪失により素人になった中学硬式野球のスター·要圭を中心に、野球をやめた天才たちの活躍を描く漫画らしい作品で、多くのファンが更新を楽しみにしている。


 また『グラゼニ』で知られる森高夕次が原作を手がける『4軍くん(仮)』(漫画:末広光)は、都立高校を東東京大会ベスト4まで導いた高校球児・荻島航平が、大学野球の「4軍」という最下層から下剋上を目指す物語。同じく「野球」をモチーフにしながらこれだけバリエーション豊かな作品が展開されていることに、野球漫画というジャンルの長い歴史と奥深さを感じる。

 国の代表になるレベルの選手は当然素晴らしいが、裾野に広がる豊かな文化や競技環境/競技人口があってこそのトッププレイヤーであり、野球経験のない野球ファンとしては、少年野球の控え選手も、草野球で汗を流す中年選手も、等しくリスペクトすべき野球人だ。感動の続くWBCが終わったとしても野球の魅力を教えてくれる漫画を日々の楽しみの一つにしてみてはいかがだろうか。

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