松本潤主演『どうする家康』は独特な「映像ルック」も見どころ! ガイドブックから紐解く魅力

ガイドブックで紐解く『どうする家康』

 1月8日より放送がスタートした松本潤主演のNHK大河ドラマ『どうする家康』(NHK総合)。その「見どころ」は、果たしてどんなところにあるのだろうか。脚本を担当する古沢良太(映画『ALWAYS 三丁目の夕日』、ドラマ『リーガル・ハイ』シリーズ、『コンフィデンスマンJP』シリーズ他)曰く、「戦国のサバイバルも描いていきますが、核となるテーマは夫婦であり、家族です」とのことだけど……昨年末に出版された『どうする家康 前編』(NHK大河ドラマ・ガイド/NHK出版)を手掛かりに、今後の展開とその「見せ場」について、諸々推測してみることにしよう。

 主役である徳川家康役を演じる松本潤と、その正室・瀬名(築山殿)を演じる有村架純、そして古沢良太の3人による「撮り下ろし巻頭座談会」をはじめ、家康の家臣を演じる大森南朋(酒井忠次役)、山田祐貴(本田忠勝役)、杉野遥亮(榊原康政役)、松重豊(石川数正役)、松山ケンイチ(本多正信役)など、メインキャストたちの紹介&インタビューが、カラー写真と共に数多く収録されている本書。それらのインタビューを読み解いてみるに、やはり前半戦の「見どころ」は、若くて頼りない主君·家康とその家臣団、そして家康と瀬名の関係性が、どのように築かれていくかにあるようだ。

 その序盤における注目ポイントは、これまであまり描かれることのなかった「三河一向一揆」になるのだろう。永禄6年(1563年)から翌年にかけて、若き家康が領主を務める三河の地で起こった、浄土真宗・本願寺門徒たちによる大規模な反乱だ。のちに描かれることになるであろう「三方ヶ原の戦い」「伊賀越え」と並んで「家康の三大危機」とされる「三河一向一揆」。その出来事は、結束の固さで知られる家康の家臣団の内部にも、大きな亀裂を入れていく。とりわけ、一揆側に加担するため家康のもとを去った本多正信(松山ケンイチ)が、その後どのようにして再び家康と主従関係を結び、その晩年に至るまで「側近中の側近」とみなされるようになるのか。それは本作の、ひとつの大きな「見どころ」になるのだろう。

 そして、前半戦のクライマックスは、やはり家康と瀬名、その嫡男である竹千代(のちの信康)にまつわる「顛末」――「築山事件」として後の世に知られる「悲劇」になるのだろう。本書に掲載されている「制作者インタビュー」の中で、脚本家・古沢良太は、その意気込みについて、次のように語っている。

「瀬名は「悪女」として長く伝わってきた人物ですが、それは家康を神聖化して徳川幕府の安泰を図るための「徳川中心史観」によるところも大きい。近年は新しい研究も出てきているので、従来の定説にこだわらず、最新の研究も踏まえて「本当はこういう人だったのでは」と想像をめぐらせています」

 瀬名=「築山殿」を、従来のような「悪女」としては描かないこと。その背景には、「これまでのイメージを壊したいのではなく、どこにでもいる普通の人として描きたいと思っています」という、彼ならでは「家康像」も関係しているようだ。続けて古沢は言う。

「現代でも戦争はあり、苦しんでいる人たちがたくさんいます。戦乱の世を、男のロマンとして描くことはもう難しいだろうなと思っていました。そんなときに始まる、今回の大河ドラマ。戦が嫌いなナイーブな少年が、なんとかして戦のない時代を実現していく物語です。家康は現代的なヒーローになれると僕は思いますよ」

 キャストや制作者などの豊富なインタビューに加えて、駿府、三河、遠江といった家康ゆかりの地を写真や地図と共に紹介する「家康ゆかりの地を歩く」、1983年放送の大河ドラマ『徳川家康』を、家康役を演じた滝田栄、織田信長を演じた役所広司のインタビューと共に振り返る「プレイバック大河ドラマ」、本作の時代考証を務める静岡大学名誉教授・小和田哲夫のインタビューなど、さまざまな記事が収録されている本ガイド。その中でも、個人的にとりわけ興味深かったのは、「どうする家康 美術の世界」と銘打った記事だった。

 初回のオンエアを終えた時点で、すでに大きな話題を集めている、その独特な「映像ルック」についての記事である。「大河ドラマに革命を!」という見出しのついた同記事の中で、演出総括の加藤拓は、次のように述べている。

「近年の異常気象で真夏のロケが過酷になり、コロナウイルス感染防止のため大人数でのロケも難しくなりました。そんな中で労働環境を整備しつつ、1年間を通して安定した、高いクオリティーの映像作品を作るため、私たちはこの『どうする家康』からイノベーションを起こそうとしています」

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