巨大生物が現れたら……『怪獣8号』から『巨蟲列島』まで、恐ろしい想像を掻き立てる漫画たち

巨大生物が恐ろしい漫画といえば?

 テレビアニメ版が2024年に放送されることが発表され、さらに注目を集めている人気漫画『怪獣8号』。怪獣が人々の生活を脅かす「怪獣大国」の日本を舞台に、怪獣化の力を手に入れてしまった主人公が奮闘する物語で、当初は特撮モノのカッコよさと、“おじさんヒーロー”がのし上がるサクセスストーリーとしての魅力が目立っていた。しかし直近のエピソードでは、愛すべき人々の幸福が残酷に踏み躙られる描写があり、「少年ジャンプ+」上のコメント欄がやや紛糾するなど、「怪獣の恐ろしさ」が感じられるシビアな作品という印象も生まれている。

 「巨大生物」モノは根強いファンを抱える人気ジャンルだ。本稿では、巨大生物と対峙するすることになったら……という恐怖をかき立ててくれる作品をピックアップしたい。

ポップなタイトルとのギャップが怖い『渋谷金魚』

 「ガンガンJOKER」で連載されたパニックホラー『渋谷金魚』。趣味としている映画撮影のアイデアを得ようと、刺激の多い街・渋谷に足を運んだ月夜田初は、退屈な日常を完膚なきまで破壊する出来事に遭遇する。目の前には、人を喰う巨大な金魚たち。渋谷はパニックに陥ってーー。

 街中を巨大金魚が遊泳する……という、一見ファンタジックで楽しげな設定だが、描かれる物語は恐怖そのもの。渋谷という多くの人にとって馴染みのある“楽しい街”と、愛らしい金魚というモチーフが秀逸で、タイトルとのギャップで恐ろしさが凝縮する。ハードボイルド小説の人気作『新宿鮫』なら、不穏で凶暴なイメージがタイトルからも伝わってくるが、『渋谷金魚』からこのストーリーを想像できた人は少ないだろう。

 本作は全11巻で完結済み。特に渋谷に足を運ぶ機会が多い人はリアルな恐怖を感じることができる作品なので、日常のありがたみを再認識する意味でもチェックしたい。

原作者こだわりの巨大昆虫『巨蟲列島』

 少なくない人が生理的嫌悪感を覚える「昆虫」が巨大化して襲ってきたら……そんな想像力をかき立て、セクシー&グロテスクな描写でも人気を博した『巨蟲列島』は、続編やスピンオフも制作された問題作だ。2020年には劇場版も公開されている。

 旅客機の事故で流れ着いた島で、高校生たちが巨大昆虫と対峙しながら生存を勝ち取っていくサバイバル作品で、青年向けの刺激を追求した作品にも思える。しかし、原作の藤見泰高は多くの“昆虫漫画”を手がけてきた実力派で、昆虫をそのまま巨大化させるのではなく、「巨大化したらどうなるのか」という考察のもとデザインを行なうなど、随所にこだわりが見られるのも魅力だ。

 終始“閲覧注意”な作品だという注意喚起はしつつ、刺さる人には深く刺さるエンタメ作品なので、昆虫やサバイバルが好きで、刺激に飢えた人はぜひ確認してみよう。

学園に現れた不気味なクリーチャー『餓天使』

 連載中の作品で、学園が恐怖に染まる緊張感が味わいたいなら、『餓天使』(サンデーうぇぶり)も恐ろしい。

 謎のテロ組織により、生物兵器「餓天使」が世界中に解き放たれる。その魔の手は聖オリビア学園にも及び、校舎は血の海に。生徒たちは生き残りの鍵となる「D-エンジン」を手に入れるが、本当の地獄はそこから始まるのだったーー。

 こちらも閲覧注意の内容だが、いい具合に人間に近い造形の巨大クリーチャーたちと、誰の記憶にも結びつきやすい「学校」というシチュエーションが恐怖を増幅する作品だ。

 ある種のロマンと恐怖を感じる、漫画のモチーフとして魅力的な「巨大生物」。自分がもしそのシチュエーションに置かれたらどう行動するか、と想像してみるのも楽しい。皆さんがもっとも怖い巨大生物はどんなものだろうか。

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