『東京卍リベンジャーズ』は終わらないーー今後への期待が高まる、スピンオフ2作の“振り幅”

『東リベ』スピンオフの“振り幅”

 人気漫画『東京卍リベンジャーズ』が11月16日、同日発売の「週刊少年マガジン」51号で幕を閉じた。その余韻が残るなかで、本日17日、本編のコミックス最新刊となる30巻(※最終巻は2023年1月17日発売の31巻)とともに、『東京卍リベンジャーズ ~場地圭介からの手紙~』(漫画:夏川口幸範/原作:和久井健)1巻、『東大リベンジャーズ』(船津紳平)4巻という、公式スピンオフ&パロディー作品が発売された。『東リベ』はまだ、ファンの心をつかんで離そうとしない。面白いのは、上記2作の振り幅だ。

 『場地圭介からの手紙』は、ともに『東リベ』の人気キャラクターである、東京卍會(トーマン)壱番隊隊長・場地圭介と、副隊長・松野千冬の出会いから別れまでを描く物語だ。「芭流覇羅」との抗争で場地を亡くし、そのことがまだ受け入れられない千冬。そんな彼に生前の場地からの手紙が届くところから、物語は始まる。千冬はなぜ、場地圭介という男にこれほど惚れ込んでいるのか。そして、どんな経緯でトーマンの副隊長になったのかーー。

 前副隊長・佐藤龍星のキャラクターもよく、単純に「不良漫画」としてのクオリティが高い。そもそも場地圭介と松野千冬のキャラクターが立ちすぎるほど立っており、『東リベ』本編を知らない読者でも十分に楽しめる、単体でも成立する作品だと言える。本作を読み、本編に戻れば物語に厚みが増している、という意味でも理想的なスピンオフ作品だ。

 一方の『東大リベンジャーズ』は、公式が認めたことに拍手を送りたくなる、おふざけの利いたパロディ作品だ。主人公は東京大学を卒業しながら、私生活もバイトもうまくいかず、日々鬱々と過ごしている「井丁ミチタケ」。在学中に片想いしていた女性が「慶應大学卒の男と結婚した」ことを知り、彼女を救う(?)ためタイムリープすることになる。

 作者は、『金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿』も手がける”スピンオフコメディ”の名手・船津紳平。既存の人気作をメタ的に捉え、名シーンやお約束、読者の突っ込みポイントを整理した上で、パロディにして笑いを誘うのが抜群にうまい。冗談が苦手な『東リベ』ファンにはおすすめしないが、本編と比較して読むのも面白く、多少のおふざけでは揺るがない、オリジナルの強度の高さも確認できる(つまり、パロディにされているシーンできちんと熱くなれる)。未読の人は、「日和ってる奴いる?」というパワーワードがどんなシーンで使われるか、予想しながら読んでみていただきたい。

 シリアスで熱い、本編とそのまま地続きの作品と言える『場地圭介からの手紙』と、本編に印象的なシーンやセリフが多かったからこそ、おふざけたっぷりでも味わい深いパロディ作品になっている『東大リベンジャーズ』。この振り幅で、今後も関連作品が生まれ続けるなら、続編を期待するまでもなく、『東京卍リベンジャーズ』はまだまだ終わらない物語になりそうだ。来年は実写映画の第二弾として、「血のハロウィン編」が前後編で公開される予定で、11月ごろには六本木で大規模展覧会が開催。合わせて『東京卍リベンジャーズ 特別編(タイトル未定)』が公開されるという発表もあった。スピンオフが読みたいキャラクターも、挙げ尽くせないほどいる。

 こうした本編終了後の広がりを考えても、本編の最終回は爽やかなハッピーエンドでよかった、と言えるだろう。そのおかげで、晴れやかな気持ちで関連作品を楽しみにできる。和久井健という作家の次回作も楽しみだが、『東リベ』の今後の展開にも期待したい。

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