『ボイステラス シックス』リアル音楽バトルがコミックと交錯 作画・猫屋敷「キャラがいつ脱落するか、ハラハラして描いてます」

現在LINE漫画で連載中のwebコミック

 「LINEマンガ」で連載されているwebコミック『ボイステラス シックス』。THE ORAL CIGARETTESの山中拓也とゲームクリエイター・脚本家の山中拓也によるプロジェクト“ボイステラス6”の公式コミック作品だ。本作は、同姓同名の二人の山中拓也が立ち上げた二次元と三次元を行き来する画期的なプロジェクトとなっている。

 ジャンルの違う6人のミュージシャンが、とある謎の施設『ボイステラス』に集められ、自らの得意とするジャンルで音楽バトルを行い、そのバトルに負けた者は音楽シーンから消されてしまうというストーリー。そのマンガ作品内の音楽バトルの勝敗決定方法が、実際にリアルの楽曲の再生回数で決まるため、楽曲の再生回数によって作品のストーリーが変わる。

 リアルとリンクしライブ感を持ってハードなスケジュールで描くのは、猫屋敷。本作が連載デビュー作となる。リアルが故のスピード感、作画する上でのポイントなど、『ボイステラスシックス』の裏側に迫るインタビュー。

どのキャラクターが脱落してしまうのか、いつもハラハラ

ーー『ボイステラス シックス』は作品に音楽が付随して、読者参加型でいわば“デスゲーム”が展開する、画期的なプロジェクトです。作画を担当されることになった経緯と、そのときの率直な感想から教えてください。

猫屋敷:私はマンガの専門学校を卒業しているのですが、在校中からお世話になっていた小川先生(日本アニメ・マンガ専門学校のマンガ学科講師後、マンガやイラストのディレクション業務を行っている)にイラストや漫画のお仕事をよくご紹介いただいていて、そのなかで、本作の作画に推薦していただいた、という流れでした。とても大きいプロジェクトですし、「決まれば漫画家として連載デビューが決まる!」と緊張していました(笑)。作画に決定したとご連絡をいただいたときは、本当にうれしかったです。

ーー本日は小川先生もいらっしゃいるので、多くの漫画家さんとコネクションがあるなかで、猫屋敷さんを推薦した理由も伺いたいです。

小川:猫屋敷さんのことは学生時代からよく知っているのですが、もともと少年漫画志向で、当時からキャラクターの表情を描くのがとても得意な作家さんなんです。『ボイステラス シックス』はデスゲーム的な物語ですから、恐怖や安堵など、さまざまな表情を上手く描く必要があると考えて、お声がけさせていただきました。

ーー確かに作品の構成上、各キャラクターのバックグラウンドが描かれるのが“退場”した後になりますから、そうした肉付けのない段階で個性や内面を伝える上で、「表情」はとても大きな要素になりますね。リアルタイムで展開が変わっていく物語なので、制作は大変だと思うのですが、どのように進行しているのでしょうか?

猫屋敷:通常の連載であれば、先まで描き溜めておくこともできると思うのですが、『ボイステラス シックス』はそれができなくて。「バトル」の結果が確定した段階で、山中拓也さんがシナリオを書かれて、それを受け取ってすぐに作画に入る……という、とても早いバトンの受け渡しになっているので、その点は少し大変かもしれません。私自身も先の展開がまったく読めない立場なので、どのキャラクターがどこで脱落してしまうのか、いつもハラハラしながら描いています(笑)。

ーーハードなスケジュールだと想像しますが、事前に準備をしすぎていないからこそ、作品にドライブ感が出ていると思います。

猫屋敷:作画が決まった段階で、キャラクター設定など、大まかなプロットはいただいていたのですが、それも確定したものではなくて、本当にリアルタイムで面白いシナリオが生み出されていくので、私自身も読むのが楽しみなんです。それを小川先生と話し合いながらマンガにして、ご担当いただいているLINEマンガの小室稔樹さんに確認いただいて、お二人の山中拓也さんに最終確認をお願いする、という進行になっています。

小室:ボイステラスシックスの作家さんを決めるとき、実は満場一致で猫屋敷さんに決まりました。猫屋敷さんは、サンプルとしてキャラクターの立ち絵のほか、2Dキャラに落とし込んだイラストも描いていたんです。

猫屋敷が描いた立ち絵だけではなく顔の表情や2Dのイラスト

 絵の幅も広いし、イメージにぴったりだと。実際、本当にすごいスピードで描いているのですが、最終確認の際、二人の山中さんからも、ほぼNGが出ないんです。猫屋敷さんは“汲み取り力”が本当に高い作家さん。だからこそ、この作品が成り立っていると思います。リアルタイムで物語が変わっていくマンガ、という企画は過去にも話題になったことがありますが、作画して連載するのが難しすぎるというとてもハードなので、断念したと聞きました。二人の山中拓也さんもそうですし、猫屋敷さんも小川さんも、僕は尊敬の目で見ています!

表情と空気感でキャラクターの内面/魅力を伝える

ーーチームとしてビジョンを共有できているからこそ、成り立っている作品だということですね。先ほど「表情」というお話がありましたが、やはりキャラクターの掘り下げがない段階で、思い入れや愛着を読者にどう持たせるか、ということが作画上のひとつのポイントになっていると思います。リアルタイムで変化していく、という物語の構造上、作画で意識していることはありますか?

猫屋敷:山中さんからいただいたシナリオを映像化していくような作業になり、やはり「表情」にはとてもこだわっています。誰が脱落するかわからない展開のなかで、キャラクターたちにもそれぞれ謎の部分があったり、意外な人間性があったりしますので、表情から「このキャラって、こんな可愛げがあるんだ」とか、「実はこういう人間味がある性格なんだ」ということを感じ取っていただけるようにと。会話の流れのなかでも細やかに表情を描き分けて、内面を伝えたいと考えています。

ーー確かに、「自信家に見えて繊細な部分があるのかな」など微妙なニュアンスから想像が膨らみます。設定がガチガチに詰まっていない分、猫屋敷さんの解釈によってキャラクターが出来上がっていく、という側面が大きそうですね。また、読者参加型のバトルで脱落者が決まるという構成上、作画においても各キャラクターを偏りなく、フラットに描くことが重要なのかなと思いました。

猫屋敷:そうですね。どのキャラクターにどれくらいのスペースを割くのか……という細かなバランスについては、そこまで厳密には考えていないのですが、「このキャラが目立ちすぎだ!」というツッコミをいただかないようには意識しています(笑)。キャラクターの魅力によって、「このキャラの楽曲を聴きたい」と思ってもらえるようにしなければならないので、バランスをとりながらも、きちんとそれぞれの個性を引き出そうと。それに本作はフルカラーですし、かつスマホで読むことを前提としているので、キャラクターの衣装など、カラーバランスも含めて読みやすさはかなり意識しています。それがキャラクターの魅力にもつながるのかなって。

ーーwebtoonの隆盛も含め、カラーでマンガを読むことの楽しさは広く読者に共有されつつあると思います。モノクロとフルカラーでは、実際に作画をする上でどんな違いがありますか?

猫屋敷:フルカラーでの作画は初めてで、普段は白と黒で表現するのですが、陰影については感覚的には変わらないと思います。ただ、全体的に色がつくことによって見え方は変わりますし、和やかな雰囲気のときは明るめの色合いにしたり、暗いムードのときは寒色を入れたりと、色合いで空気感を伝えられるのが、カラーの強みだと考えています。

ーー確かに、基本的に密室で展開される物語なので、シチュエーションはあまり変わらないのですが、カラーによって空気感が変わるので画が単調になっていませんね。

猫屋敷:そう感じてもらえたらうれしいです。共同スペースや個人の部屋もあるとはいえ、基本的には同じ部屋で物語が進行しますし、会話劇も多いので、工夫しないと代わり映えのない画が続いてしまいかねなくて。コマの割り方やキャラクターの表情も含めて、メリハリをつけようと考えています。

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