漫画アプリ「ブックライブ fun」の挑戦・前編 独占配信の中国コンテンツとブックライブで培ったナレッジが武器 

(左から)BookLive 編成・運営本部長 宮下聡氏、ライツビジネス部長 梁俊明氏

 国内最大級の総合電子書籍ストア「ブックライブ」を運営するBookLiveは、今年の5月から新たな漫画アプリ「ブックライブ fun(ブックライブ ファン)」の提供を開始した。

 人気漫画が毎日1話ずつ無料で読めるなど、取り扱い作品数やアプリの機能性はもちろんだが、注目すべきは日本初となる“中国発縦スクロール漫画”の独占配信を行っている点だ。

 『六本木クラス』のドラマ化や、様々な企業が制作スタジオの参入を発表するなど、国内では韓国発縦スクロール漫画・Webtoonが人気を博している今、なぜ中国だったのか?

  前編では、BookLiveで編成・運営本部長を務める宮下聡氏に、本アプリを立ち上げた経緯や、今後の展開についてうかがった。(ちゃんめい)

まだ読まれていない、新しいコンテンツを読者へ提供したい 

――中国発縦スクロール漫画に着目されたきっかけを教えてください。

宮下:総合電子書籍ストアの「ブックライブ」とは別に、スキマ時間でカジュアルにマンガを読む若年層向けに新しい無料アプリを提供したいと考えていました。ただ、弊社が漫画アプリに参入するタイミングでは、すでに先行サービスが提供されていたので、読者に選んでもらえる新しい価値を提供する必要があったんですよね。

 サービスの基本設計は、話配信形式の漫画の無料配信です。対象作品を毎日1話無料で読むことができ、読了後に23時間待つとチャージが回復して次の1話が読めるようになります。ブックライブfunでは、この機能を「チャージ無料」と名づけましたが、これは集英社「ジャンプ+」、講談社「コミックDAYS」などの出版社発の漫画アプリでも対応されていて、いまでは多くの無料漫画アプリのベースとなっています。

 それに加えて「ブックライブ fun」では、ここでしか読めない、ユーザーが楽しめる作品を提供したいと考えました。国内外含め作品を探していた時に出会ったのが中国発縦スクロール漫画です。

 国内ではすでにウェブトゥーンと呼ばれる韓国発の縦スクロール漫画が人気になっていますよね。日本で一般的なページめくり型のマンガよりもストーリーや登場人物の設定がシンプルで、ちょっとしたスキマ時間に読むには大変適しています。

 そうした韓国発の漫画は既に国内での展開実績が多くありましたが、中国にはまだまだ開拓できていないコンテンツがたくさんあることに気付いたんです。

 実際に現地にも赴き交渉を重ねて、中国最大級のマンガプラットフォーム「快看(クワイカン)」をはじめとする25社以上の権利元様より『スキャンダラスな女(粉碎星辰)』や『気づかない初恋(再度与你)』など、中国で実写化もされている超人気作品を独占配信する運びとなりました。

――日本ではこれまで中国作品の展開が積極的ではなかったと思います。難しさなどがあるのでしょうか?

宮下:韓国作品と比べて、中国作品の方がローカライズの手間がかかるからではないでしょうか。やはり縦スクロール漫画は韓国の方が先行しているので、物語の設定やカラー、細かい描写など、グローバル展開を視野に入れて作られているんですよね。そうなると日本の読者の感性とマッチした作品も多くて、結果的にローカライズの負担が減る……。だから、ローカライズから配信までを効率的にスピーディーに行うために、韓国作品の方が積極的に展開されてきたのだと思います。

――中国作品の独占配信は、特に漫画ファンの集客に寄与しそうだと感じました。

宮下:そうですね。中国漫画には日本の漫画ファンも満足できる面白さがあると思っています。しかし、どうしても作品の知名度がネックになってしまうので、いかに日本の読者に作品の存在を知ってもらい、作品の中身を読んでもらうか、意識して取り組んでいます。

 まず、作品やサービスを知ってもらうために広告展開を行っていますが、次に広告で紹介した作品を、アプリ内で読者がいかに見つけやすくできるかというユーザー導線はもちろん、広告以外の魅力ある作品をどのように読者に届けていくかも試行錯誤しているところです。

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