少年誌初のBL漫画『ババンババンバンバンパイア』作者が語る、“ブラッディ・ラブコメ”の作り方「人物相関図をぐちゃぐちゃにさせる」

『ババンババンバンバンパイア』作者が語る

 BLと書いてボーイズ・ラブではなく”ブラッディ・ラブコメ”と読む。そんな新感覚のBLマンガが今大きな話題を呼んでいる。その名も『ババンババンバンバンパイア』。


 主人公は、老舗銭湯で住み込みバイトをする見目麗しい青年・蘭丸。そんな彼の正体は450歳の吸血鬼。彼にとって最高のご馳走である“18歳童貞の血”を求めて、銭湯の一人息子・李仁(15歳・童貞)の操を守り続けているが、高校へと入学し思春期を迎えた李仁は、同じクラスの女の子に恋をしてしまう。こうして、何としてでも李仁の童貞喪失を絶対に阻止したい蘭丸の奮闘の日々が幕を開ける。

 思わず目を奪われる美しいキャラクターたちと、そんな絵柄からは想像もつかないような勢いと笑いによって読者を魅了する本作。今回は、作者・奥嶋ひろまさ先生に本作が生まれた過程や創作秘話をうかがった。(ちゃんめい)

『ババンババンバンバンパイア』Tシャツで登場した奥嶋ひろまさ先生

原点にして伝説の読切『軍服さん~吸血鬼と恋~』

ーー「別冊少年チャンピオン」2021年7月号に掲載された読切『軍服さん~吸血鬼と恋~』が『ババンババンバンバンパイア』の原点とのことですが、吸血鬼や軍服といったモチーフは何から着想を得たのでしょうか。

「別冊少年チャンピオン」2022年8月号にて再掲載された『軍服さん~吸血鬼と恋~』

奥嶋:吸血鬼ネタはいつかやりたいなとずっと前から思っていたんですよ。だから、最初は吸血鬼の要素だけでネームを出したんですが、当時お世話になっていた女性の担当編集さんから「軍服好きの女性って結構いますよね」と教えてもらいまして。それなら軍服推していきましょうか!という流れで決まりました。

ーー吸血鬼を描きたいと思ったのは何がきっかけだったのでしょうか。

奥嶋:映画『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』を観て、吸血鬼=美しい男性というイメージがあったんです。僕自身、マンガでイケメンや美しい男性を描くのが好きだったので、そこが始まりだと思います。

ーー『軍服さん~吸血鬼と恋~』が掲載された時、読者や周囲からの反響はいかがでしたか?

奥嶋:どうなんだろう。雑誌掲載時の反響は全く分からないんですよ。でも、Twitterに掲載した時は、当時1万いいねくらいついて、いくつか良いコメントをいただいたので反応は良かったのかなと。ただ、改めて読み返してみると、キャラクターのビジュアルが少し幼すぎたかなと思います。

ーー『ババンババンバンバンパイア』の蘭丸(通称・蘭ちゃん)になると、もう少し大人の色気が増しますよね。

奥嶋:そうですね。『ババンババンバンバンパイア』だと、恋をする相手が15歳なので、年齢差をつけた方が良いかなと思って、あえて大人っぽくしました。

実際に行った取材から生まれた銭湯×吸血鬼

ーー作中に登場する「こいの湯」は、石神井台にある実在の銭湯「たつの湯」がモデルなんですよね。「たつの湯」は、過去作『入浴ヤンキース』にも登場していましたよね?


奥嶋:『入浴ヤンキース』は、当時の担当編集さんからの「銭湯とヤンキーっすよ!」みたいな提案からスタートしたので、銭湯が物語の舞台になったのは完全にノリだったんですけどね(笑)。


奥嶋:それで、作品を描くために実際に「たつの湯」へ行って、取材をさせていただいたんですが、銭湯って湯船に入るだけではなくて、裏側があるんですよ。湯を沸かして、薪を切って......みたいな。そんな銭湯の裏側が面白いなと思ったんです。『入浴ヤンキース』の時は、残念ながらページの関係もあってその裏側が描けなかったので、当時の取材を活かしたいなと思って、『ババンババンバンバンパイア』の舞台を銭湯にしました。

ーー夕方から営業開始して、深夜に掃除・仕込みをする銭湯の仕事は、夜行性で日光が大敵な吸血鬼との生態ともうまくマッチしていますよね。

奥嶋:そうなんですよ。「たつの湯」は宮造りなのですが、銭湯の裏側に居住スペースがあるんです。今はそこに誰も住んでいないそうなんですが、昔は住んでいたという話を取材の時に伺いまして。で、宮造りって全体的になんか薄暗いんですよ。2階になると階段からもう真っ暗で、それこそお化けとか出てきそうな感じだったので、ここに吸血鬼を住まわせたら良い感じになるんじゃないかなって(笑)。


ーー実際に取材を行った経験があるからこその発想ですね。

奥嶋:銭湯が一番忙しいのは、22時くらいに営業が終了してから行う掃除だったり、次の日の仕込みとか、深夜帯なんですよね。それが吸血鬼の生活パターンとぴったりだなと思いました。作中では、今後もう少し銭湯の仕事風景を見せられたら良いなと。

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