無防備さこそが最大の魅力? ジャンプ期待の青春ラブコメ『アオのハコ』が捉える”きらめき”

『アオのハコ』が捉えた”青春のきらめき”

 一方、これから台風の目となりそうなのが蝶野雛の存在だ。大喜の同級生で新体操部のエースとして周囲から期待されている蝶野は、自分が「かわいい」ということに対して、とても自覚的に振る舞っているアイドル的な女の子だ。

 こういうキャラは計算高い小悪魔的な存在として描かれがちだが、作者は蝶野雛を努力している姿を表に見せずに、おどけて笑っている女の子として描いており、むしろ期待に応えようと無理している姿が痛々しく見える。そんな蝶野にとって大喜は本音を語り合える親友といった感じだが、今後二人の関係がどうなっていくのか楽しみである。

 物語として大喜と千夏先輩、そして蝶野雛の三人の人間関係を中心に描くこととなりそうだが、現時点においてはお話よりも絵柄の魅力が、作品を引っ張っているように感じる。大喜の目を通して描かれる千夏先輩の些細な仕草や会話の時に見せるちょっとした表情はとても魅力的で、細かい表情の違いに、思春期の男の子から見た女の子の「何を考えているのかわからない感じ」が凄く現れている。そのため、ちょっとした仕草の変化を見つける度に大喜と同じように一喜一憂してしまう。

 何より漫画表現として突出しているのが、髪の毛の見せ方だろう。首の向きや身体の動きといっしょに髪の毛が揺れ動く様子がさりげなく描かれており、目や口ではなく「髪の毛の揺れ」にこそ千夏先輩らしさが現れていると言える。

 日常の中で女の子が一見せるかわいい仕草を作者は丁寧に拾い上げている。こういうシーンは大喜の気持ちになって千夏先輩を見ているからこそ描けるのだろう。ラフでシンプルなタッチだが、だからこそ一瞬しかない青春のきらめきを捉えられるのだ。

■書誌情報
『アオのハコ』1巻(ジャンプコミックス)
著者:三浦糀
出版社:集英社
https://www.shonenjump.com/j/rensai/list/aonohako.html

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