ゴールデンボンバー・歌広場淳、『刃牙』をBLとして楽しむ乙女に共鳴 「一つの作品を二度楽しむ豊かな体験」

歌広場淳が語る『刃牙』とBL

「『刃牙』というシリーズの豊かさを伝えてくれる」

ーーシンプルに、人の数だけあっていい「楽しみ方」のひとつについて、ものすごく解像度を上げてまとめた一冊だということですね。

歌広場:それと、タイトルに「1日30時間300日考えた乙女の記録」とあるように、この作品は“成長譚”なんですよ。どんなエンターテインメントもそうですが、人が成長して、できることが増えていく様子を見るのは楽しいですよね。ドラマや映画でも、「修行」のシーンはBGMが変わってダイジェスト的に演出されるのが、ちょっと楽しかったりして。ドラマ版でその成長がどう表現されるのか、というのも楽しみなところです。

ーーシリーズの初期作品『グラップラー刃牙』を9冊読んだだけの段階で、金田さんは恐るべき経験値を得ていることが分かりますね(笑)。いずれにしても、「裏」の楽しみ方ができるというのは、その作品をより深く味わう助けになりそうです。

歌広場:そうですね。一つの作品を表と裏で二度楽しもうとしているわけですから、良いか悪いかは別として、豊かな体験をしていることは間違いないと思います。例えば、国語のテストで「『桃太郎』を読んでどう思ったか」という設問があったときにどう答えるか。僕も、おそらくカネジュン先生も、最初は100点を目指すんです。ツッコミ的な目線からすると、「犬、猿はまだしもキジは飛んでいったら追いかけることができないから、戦力として計算するなら足を紐でくくって、逃げないようにした方がよさそう」と思ったりするけれど、まずはちゃんと100点が取れるように、「酷いことをする鬼を退治して、おじいさん・おばあさんに恩返しができてよかった。そのためには仲間の存在が必要だった」と表の楽しみ方をする。その上で、「でも、キジは……」という感想も語りたいじゃないですか。たぶん、そこだけがピックアップされて、「変な意見で人目を引こうとしている」「奇をてらって目立とうとしている」と捉えられてしまうことがあるんですけど、最初からうがった目で見ているのではなく、ちゃんと楽しんだ上でツッコんでいるんだ、ということを知っていただけるとうれしいですね。


ーー思いもよらない角度で新しい楽しみ方を伝えてくれる人は貴重だと思います。

歌広場:例えば、ゴールデンボンバーって、CD屋さんで「ヴィジュアル系」の棚にも置かれるし、「J-POP」の棚に並ぶこともあって、それはお店の方の考え方次第なんですよ。

ーーそれだけ豊かなグループなんだと捉えることもできますね。今回の本も、『刃牙』という漫画が持つ豊かさを教えてくれる作品というか。

歌広場:そうなんですよ。「BL」という言葉にネガティブなイメージを持つ方もいるかもしれませんが、作品を貶めるような意図は一切なく、まさに『刃牙』というシリーズの豊かさを伝えるものだと思います。

ーー歌広場さんもBL作品を愛好していますが、どんなきっかけで親しむようになったのでしょうか。

歌広場:BLという言葉がいつからあるのかわかりませんが、僕は生まれたときからカッコいい男の子を見るのが好きで、中学時代からは西炯子先生の漫画をずっと読み続けてきました。「ある日、街を歩いていたら突然カッコいい男の人に声をかけられて、素敵な毎日が始まる……」みたいな狂った妄想もしたことがあって(笑)。そして、そのときに想像される「カッコいい男」というのが、BL作品のキャラクター、特に西先生の作品に登場する「嶽野義人」だった。もし、この本とドラマを通じてBLというジャンル自体に興味が出たら、ぜひ西炯子先生の初期の作品、『僕は鳥になりたい』や『水が氷になるとき』(ともに1990年、プチフラワーコミックス)などぜひ読んでもらいたいですね。

ーー嶽野義人というキャラクターのどんなところに惹かれたんですか?

歌広場:彼は何でも受け入れてしまう、スゴい男なんです。それに憧れたから、僕も何でも受け入れる人間になってしまったのかもしれない(笑)。大人になっていくと、愛されることとか、自分が存在する意味とか、みんなわからなくなっていくじゃないですか。そのなかで、何でも受け入れてくれる人がいたらいいなと思うし、そういうことを一般的な恋愛漫画よりしっかり描いているのが、BLというジャンルだと思うんです。

 なんて熱く語ってしまいましたが、いずれにしても今回のドラマ化を機に、『グラップラー刃牙』に興味を持つ人と、BLに興味を持つ人が出てくる、豊かな展開が生まれることに期待しています。

▶︎後編に続く(ゴールデンボンバー・歌広場淳も虜に 『刃牙はBL』“人と違う”松本穂香の魅力

■「児島あかねの!ボーイズラブって何だろう?」

児島あかね(松本穂香)の!ボーイズラブってなんだろう? 前編「歴史ッッ」(WOWOW公式YouTube)

 

児島あかね(松本穂香)の!ボーイズラブってなんだろう? 後編「BLの基本枠組ッッ」(FLaMme/フラーム公式YouTube)

原作者・金田淳子監修の下、松本演じる本作の主人公・あかねが前後編にわたり“BL=ボーイズラブ”の歴史や基本枠組みを紹介するYouTube動画。
BL初心者にとっては入門編として、BL愛好者にとってはよりBLへの理解を深めるきっかけとして楽しんでほしい。

■書誌情報
「『グラップラー刃牙』はBLではないかと1日30時間300日考えた乙女の記録ッッ」
著者:金田淳子
出版社:河出書房新社
出版社サイト:https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309028439/

■放送・配信情報
WOWOWオリジナルドラマ『グラップラー刃牙はBLではないかと考え続けた乙女の記録ッッ』(全7話)
WOWOWプライム、WOWOWオンデマンドにて、8月20日(金)23:00放送・配信スタート
各話放送後、WOWOWオンデマンドとTELASAで見逃し配信
出演:松本穂香、岡山天音、神尾楓珠、岩崎う大(かもめんたる)、島田桃依、穂志もえか
原案:金田淳子「『グラップラー刃牙』はBLではないかと1日30時間300日考えた乙女の記録ッッ」(河出書房新社)
脚本:上田誠(ヨーロッパ企画)
監督:山岸聖太
音楽:王舟
エンディングテーマ曲:CHAI「Wish Upon a Star」(OTEMOYAN record / Jisedai Inc.)
制作協力:日活
制作プロダクション:ジャンゴフィルム
企画協力:秋田書店
製作:「グラップラー刃牙はBLではないかと考え続けた乙女の記録ッッ」製作委員会
公式サイト:https://www.wowow.co.jp/drama/original/bakibl/
公式Twitter:@bakibl_wowow
公式Instagram:@bakibl_wowow

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