ラノベランキング、30年前刊行の『閃光のハサウェイ』がなぜ急浮上? 劇場版で人気が再熱か

30年前刊行『ガンダム』がランクイン

 そして、巨大なモビルスーツが街中で激しい戦闘を繰り広げ、建物が崩れ銃火器から熱線が飛び交う、阿鼻叫喚のただ中に放り込まれる。コックピットに座ったパイロットたちの目線で、モビルスーツ戦が進んでいく他のシリーズとは違って、地表に立つ人間の目線から描かれるモビルスーツ戦の迫力が、「ガンダム」に詳しくない人にも戦争映画的な興奮をもたらす。

 原作小説も同様だ。テロリストによる空襲から逃れようと、ハサウェイが泊まっていたホテルからギギを連れ出して逃げ惑うシーンからは、鉄と血の臭いが漂い炎の熱さが身を焦がす戦場のリアリティが漂う。小説ではさらに、「ガンダム」シリーズで語られ続けている宇宙時代の人類のあり方や、地球を汚す人類への批判といったテーマが綴られる。アニメを観て小説を読むと、より深くハサウェイという人物に迫れる。ハサウェイは何者で、何をしようとしているのか。そこは小説や映画で確かめて欲しい。

 小説版の中巻から下巻へと続く展開は、アニメでは今後作られる第二部や第三部で描かれる。それまで待てないという人や、以前に小説版を読んでいて、アニメを観て改めて続きを読んでみたいと思った人が手に取ったことが、30年を経てのランク入りに繋がったのだろう。

 ランキング1位は、和風シンデレラストーリーとして絶大な人気を得た顎木あくみによるシリーズ最新刊『わたしの幸せな結婚 五』が、7月15日の発売前から入って人気の凄さを見せている。以下、2位に佐島勤『新・魔法科高校の劣等生 キグナスの乙女たち2』、3位に川原礫『ソードアート・オンライン プログレッシブ8』、4位に衣笠彰梧『ようこそ実力至上主義の教室へ 2年生編4.5』、5位に長月達平『Re:ゼロから始める異世界生活27』とヒットシリーズの新作が並ぶ。7月からテレビアニメがスタートした二語十『探偵はもう、死んでいる』も第1巻が17位、第2巻が29位に登場。『閃光のハサウェイ』同様に、原作を確かめて先を知りたい人が手を伸ばしているようだ。

■タニグチリウイチ
愛知県生まれ、書評家・ライター。ライトノベルを中心に『SFマガジン』『ミステリマガジン』で書評を執筆、本の雑誌社『おすすめ文庫王国』でもライトノベルのベスト10を紹介。文庫解説では越谷オサム『いとみち』3部作をすべて担当。小学館の『漫画家本』シリーズに細野不二彦、一ノ関圭、小山ゆうらの作品評を執筆。2019年3月まで勤務していた新聞社ではアニメやゲームの記事を良く手がけ、退職後もアニメや映画の監督インタビュー、エンタメ系イベントのリポートなどを各所に執筆。

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