第165回 芥川賞&直木賞、各受賞作の評価のポイントは? 受賞会見レポート

第165回 芥川賞&直木賞レポ

 同時受賞の澤田氏は1977年生まれ。同志社大学大学院文学研究科博士課程前期修了。奈良時代仏教制度史、正倉院文書の研究を経て、2010年『孤鷹の天』でデビューした。『若冲』、『駆け入りの寺』などの時代小説の著作が多い。今回は5回目の候補だった。

 受賞作は幕末・明治に活動した鬼才・河鍋暁斎を父に持った女絵師・暁翠が主人公。父の死によって崩れた家庭の均衡などを生きた女性の数奇な人生を描く時代小説。

 選考委員を代表して林真理子氏は「エンターテインメントとしての技量を見せた。非常にきめ細やかな文章の素晴らしさは選考委員で一致した」と講評した。

 受賞会見で澤田氏は「まだぽかんとしていて、戸惑っている。親しくしていた(17年に亡くなった作家の)葉室麟さんも5回目の受賞だった。葉室さんと同じ回数であることが嬉しいし、ご報告できると思う。これまでと変わらないスタンスで書き続けたい」と語った。

『星落ちて、なお』を著した澤田氏

 贈呈式は8月下旬に東京都内で開催され、受賞した各氏には正賞の時計と副賞の100万円が贈られる。芥川賞は「文藝春秋」9月号(8月10日発売)に受賞作全文と選評が掲載され、直木賞は「オール讀物」9・10月合併号(8月20日発売)に受賞作の一部と選評が掲載される。

 今回の芥川賞の他候補作は、くどうれいん氏「氷柱の声」(群像4月号)、高瀬隼子氏「水たまりで息をする」(すばる3月号)、千葉雅也氏「オーバーヒート」(新潮6月号)。

 直木賞の他候補作は、一穂ミチ氏『スモールワールズ』(講談社刊)、呉勝浩氏『おれたちの歌をうたえ』(文藝春秋)、砂原浩太朗氏『高瀬庄左衛門御留書』(講談社)。

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