漫画から抜け出てきたんですか? 『BANANA FISH』原作ファンが舞台を観に行ってみた

『BANANA FISH』ファンが舞台版を観たら?

 『BANANA FISH』をこよなく愛する女3人で鑑賞しました。原作熱烈ファンですよ、もう観る前からクリティカルな気持ちでいっぱいです。舞台の初っぱな、「オーマダーリン、オーマダーリン、クレメンターイン」の音程が判明して嬉しかったです。

 そして英二、マックス・ロボ、ショーター、シン・スウ・リン……漫画から抜け出てきたんですか?

 アッシュの金髪も違和感なく、アンニュイでクールなところもしっかり再現されていました。水江健太さん、アッシュでした! 人種違うのに!! 原作の英二のモデルは野村宏伸さんですが、岡宮来夢さんも同系列のカワユイ系で、とっても「英二」でした。 

 特筆すべきはオーサーで、原作はひたすら悪者味満載だったけど、早乙女友貴さんのオーサーはちょっぴり色気が混じっててこれまたかっこよかった。シン・スウ・リン役の椎名鯛造さん、35歳にして14歳役をやるという大役だったけど、ものすごい身体能力を発揮してぴょんぴょん跳び回り、めっちゃシンでした! 坊主にサングラスかけたらまあみんな同じ顔だよね、とは思うけど、川崎優作さんは、ショーターそのものでした。衣装もちゃんと再現されてて、原作リスペクトがハンパなかった。原作ファンも納得です。

 アッシュと英二のキスシーンは「宝塚方式か?」とか予測して、もう観る前から3人で大興奮(宝塚方式とは、キス時に顎を支える振りして口元を手で隠し、くるっと客席に背を向けて「してる感」を出す演出方法です。3人の勝手な造語)。

 アクションシーンは大迫力。英二が棒高跳びするシーンをどう再現するのかと思いきや、うまーくセットを利用していて、こういう細かい演出にも感心しました。舞台は原作のおいしいとこ取りで、名シーンを的確にチョイス。そのためたいていのシーンでキャストと一緒にセリフが言えました。もちろん「一緒にいてくれ、ずっとなんていわない。今だけでいい」なんてキャストと一緒に合唱しちゃいましたよ。

 舞台は前編と後編に分かれているようで、前編を見逃した方も後編をオススメしたい。後半はますますアッシュが超人化するので、その台詞回しやアクションにも注目ですね。また、ナチュラルに男性キャストしか出てきませんでした。令和に舞台化するための作品なんですね。その上、謎解き、アクション、魂の結びつきと、過去の傷と、もう面白いのごった煮なんですよ。男性に勧めたい少女マンガ不動の一位のわけですよ。いやー、しみじみ『BANANA FISH』は名作ですね……! 

■和久井香菜子(わくい・かなこ)
少女マンガ解説、ライター、編集。大学卒論で「少女漫画の女性像」を執筆し、マンガ研究のおもしろさを知る。東京マンガレビュアーズレビュアー。視覚障害者による文字起こしサービスや監修を行う合同会社ブラインドライターズ(http://blindwriters.co.jp/)代表。

■原作マンガ情報
『BANANA FISH』フラワーコミックス版、小学館文庫版など発売
著者:吉田秋生
出版社:小学館

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