『ケーキの切れない非行少年たち』著者が語る、“どうしても頑張れない人”に必要なこと 「細かく口出しばかりをしてはダメ」

“どうしても頑張れない人”に必要なこと

実は支援する側が元気をもらっている

ベストセラーとなった前著『ケーキの切れない非行少年たち』(新潮新書)

ーー努力をしたとしても「どうしても頑張れない」。そんな人たちに対する支援の3つの基本は、安心の土台、伴走者の存在、チャレンジできる環境だそうですね。

宮口:わかりやすいように、電気自動車に例えてみましょう。子どもなど支援する相手を電気自動車、支援者を充電器だとします。電気がなくなりそうになったら、いつ帰ってきてもきちんとした電圧で充電してくれる。これが安心の考え方です。

 伴走者は横の助手席に乗ってくれる存在です。注意したいのは、運転について細かく口出しばかりをしてはダメであること。とにかく静かに見守りながら、困ったときにちゃんとアドバイスをあげるという姿勢が大事です。

 安心の土台と伴走者の存在があると、初めて新しいことにチャレンジしたい気持ちが出てきます。子どもだったら、勉強、スポーツ、友達関係など。大人だったら、仕事、趣味など。何でもいいので新しいことができる環境に身を置くと、頑張ってみたいと思うようになるんです。

ーー発達障害や知的障害のケースだけでなく、多くの人の日常のいろいろな場面で参考になりそうです。

宮口:実はそうなんです。この本は基本的にみなさんへのメッセージです。会社の部下と上司など、いろんな場面でこの原理は使えます。ちょっとでも力になってもらえたら、という意図がありました。

ーー支援中に逃げ出したり反抗してしまうような人が、本当は一番支援が必要だとしていました。そんな矛盾の中でどうすればいいでしょう?

宮口:とても難しいところです。でもちょっとした工夫ができるはずです。たとえば、余計な声かけをしないこと。ずっとかまってほしいわけじゃないんですよ。余計な一言を言うことで、やる気を奪ってしまうことがあります。求められたときには決して見捨てずに「いつまでもいますよ」と示すだけでもいいですよね。

 これが簡単なようで、ものすごく難しい。支援する側も生身の人間なので、自分の調子が悪いことだってあります。そんなときに逃げ出したり、反抗されたりしたら、支援をやめたくなってしまう。せっかく助けようとしたのに断られたとものすごく傷ついてしまう。だから支援をしている人にも、同じように安心・安全と伴走者が必要なんです。支援者同士で、足の引っ張り合いなどをしている場合じゃないんですね。

ーー他に支援について考える上で大事なことはありますか?

宮口:実は支援をする側が逆に元気をもらっているのだという視点です。誰だって人の役に立ちたい。人に世話をされて幸せになるんじゃなくて、人の世話をして感謝されることで元気になっていくんです。だから支援をしてくれる人に、しっかりお礼を言ってあげたら、ものすごく元気が出ると思うんですよね。そういう視点は大事かなと思います。

■書籍情報
『どうしても頑張れない人たち ケーキの切れない非行少年たち2』
宮口幸治 著
発売中
価格:792円(税込)
発行:新潮新書

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「著者」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる