『呪術廻戦』「渋谷事変」が終結し、物語は「死滅回游」編へ 最新16巻は伏線が詰まった一冊に?

『呪術廻戦』最新16巻は伏線が詰まった一冊 

『呪術廻戦 東京都立呪術高等専門学校』0巻(集英社)

 そして、0巻である『東京都立呪術高等専門学校』から一度も登場していなかった、都立呪術高専2年でながら特級呪術師である乙骨憂太は、渋谷事変の幕引き後に登場。本誌を読んでいる方はご存知だろうが、とある事情があって虎杖の死刑執行人として現れた。ひどい隈と、目のハイライトが消失した姿は0巻の頃とは別人のよう。海外にいる間に何があったのか、非常に気になるところだ。しかし圧倒的強さは健在で、虎杖を着実に追い詰め、最後のページでは虎杖を引きずっている姿があった。

 さらに、乙骨が現れた場所に居合わせたのは、禪院27代目当主(候補)の禪院直哉だ。「三歩後ろを歩かれへん女は背中刺されて死んだらええ」と言ってしまうほどの清々しいクズっぷりを発揮している彼だが、読者からは人気が高いキャラだ。「五條悟が死亡または意思能力を喪失した場合、(中略)伏黒恵を禪院家当主とし、全財産を譲るものとする」という父・禪院直毘人の遺言を聞いて激昂した直哉は、伏黒と虎杖を殺害するために虎杖のもとへ向かったというわけだ。この先、禪院家のお家騒動が勃発するのだが、直哉はそこで良い働きをしてくれるキャラクターだ。

 様々なキャラが登場した16巻だが、中でも、脹相の活躍っぷりが目覚ましい。虎杖と対峙した際、血の繋がった兄弟にしか感じることのない「死」の異変を虎杖から感じ取ったことがきっかけで、虎杖に対する「お兄ちゃんだから」という思いが爆発。「とりあえず1回呼んでみてくれないか お兄ちゃんと」、「流石俺の弟だ」と虎杖に言ってみたり、兄弟が嫌いと言う直哉に兄のあるべき姿を説いてみたり、『鬼滅の刃』の竈門炭治郎よりも長男の業を背負っている状態になっている。これだけ注目集めた脹相だ、今後虎杖にとってのキーパソンになり、次章にも大きく関わってくることが想像できる。

 また、これは同作のそもそもの特徴なのだが、様々な事象が複雑に絡み合っており、注意深く読まなければ理解できない部分も多い。それにプラスして16巻では「どういうことだ?」という仕掛けも少なくない。例えば、「私もいい加減天元と向き合わないとね」という台詞から漏れ出る九十九と天元の関係性、虎杖が乙骨に刺された時に見せた宿儺の微笑、「里香ちゃん」から「リカちゃん」に変わった呼び名……などの謎は、この先の伏線になっていくのだろうか。全く気が抜けない漫画である。

 他にも、緊張感がある中にもフッと緩まるギャグが入っているのも見どころだろう。もしかすると、一度読んだだけではなかなか理解できないかもしれない。だが、何度でも読み返しても面白く、新たな発見ができる。『呪術廻戦』16巻は、そんなコミックと言っても過言ではない。

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