『名探偵コナン』赤井秀一はどんな足跡を辿ってきた? 意味深な登場、来葉峠での死闘、安室透との確執まで振り返る

『名探偵コナン』赤井秀一の足跡

「赤と黒のクラッシュ」(第57~59巻)

青山剛昌『名探偵コナン』57巻(少年サンデーコミックス)
青山剛昌『名探偵コナン』57巻(少年サンデーコミックス)

 「ブラックインパクト」の事件以来、FBIの管理下で入院を続ける水無怜奈を巡り、コナンとFBIが共同戦線を張り黒の組織と激突する長編エピソード。

 このエピソードでは赤井が以前組織への潜入捜査を行っていたことが明らかになる。組織のメンバーである宮野明美(灰原の姉)との接触、交際を経て組織に潜入したものの、仲間のミスで正体がバレてしまい、逃亡した。その後宮野明美は「奇妙な人捜し殺人事件」(第2巻収録)でジンに殺されてしまったこともあり、赤井は組織の中でもとりわけジンを敵視している。

 そんな赤井の重要な過去が明らかになった矢先、CIAとして黒の組織に再び潜入した水無がジンの指令の下、止む無く赤井を銃殺。仕掛けられた爆弾によって赤井は焼死体となって発見される。黒の組織の壊滅に動くコナンやFBI、そして赤井の強い信念とどこか影のあるキャラクターに惚れ込んだ読者に、赤井の死は大きな衝撃と悲しみを与えた。

「緋色シリーズ」(第84~85巻)

青山剛昌『名探偵コナン』84巻(少年サンデーコミックス)
青山剛昌『名探偵コナン』84巻(少年サンデーコミックス)

 「赤と黒のクラッシュ」後、新たな組織のメンバー、バーボンこと安室透や、どこか影のある大学生沖矢昴など、新キャラクターの登場でストーリーが大きくうねりを上げる中での長編「緋色シリーズ」。赤井の死の真相を探るべく、赤井の死亡現場である来葉峠に車を飛ばすFBI捜査官のジョディとキャメル。ふたりの乗る車が峠に差し掛かると突如として正体不明の車に追われることとなる。峠を縫うように走る中、タイヤはパンク。いよいよ追いつかれてしまうという絶体絶命の状況で、突如として後部座席から声が。

“屋根を開けろ… 開けるんだキャメル…”

 この赤井の“帰還”には多くのファンが歓喜。赤井秀一という男を語る上では屈指の名シーンだろう。先だって沖矢昴=赤井秀一が示唆された劇場版『異次元の狙撃手』と併せてぜひ読んで欲しいシリーズと言えるだろう。このエピソードは赤井の死の真相を解き明かす回でありながら、安室透と赤井秀一の確執が示唆されるなど、ストーリーに深く関わる重要な回になっている。『名探偵コナン』を語る上では必須のエピソードだ。

 ここまで記してきたエピソードの他にも、10年前の赤井と当時7歳の新一の出会いを描きつつ、「緋色の弾丸」にも繋がる赤井一家の秘密が明かされる「さざ波の魔法使い」(第92巻収録)や、赤井と安室の確執のキッカケが明らかになる「裏切りのステージ」(第92巻収録)など、赤井に関する重要回は数多い。そして赤井やその周辺に関わる伏線は様々なエピソードで張り巡らされている。単行本で予習をしてから「緋色の弾丸」を鑑賞すれば、より一層赤井の魅力を感じることができることだろう。

■ふじもと
1994年生まれ、愛知県在住のカルチャーライター。ブログ「Hello,CULTURE」で音楽を中心とした様々なカルチャーについて執筆。Real Soundにも寄稿。

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