ウーバーイーツ配達員が明かす、専業で稼ぐことの厳しさ 「電動アシスト自転車だろうが脚はガクガク」

ウーバーイーツで月100万稼ぐには?

ウーバーの中はブラックボックス?

ーーウーバー、なんだかよくわからないところが多いんですね。

渡辺:ブラックボックスみたいな部分はすごくたくさんありますね……。あと、報酬についても先日変更されました。以前は東京エリアの場合、1回の配達での基本料金がおよそ390円で、それにプラスして距離料金が1キロ運ぶごとに60円ついたんです。ところが今は「ベース料金」が120円~280円ぐらいで、それに「配達調整金」という謎な名目のお金がプラスされる。で、ベース料金も、配達調整金も、何を根拠に計算されているのかという明示が一切されていない。

ーー距離あたりいくら、という形ではなくなったんですね。

渡辺:そうです。名目を変更することで、ウーバーの都合で勝手に下げることができるようになりました。だから大阪とか福岡の方では勝手に減額されて、何キロ運んでも一回の配送で300円という現象も起こったそうです。

ーーそもそも、地方によって支払われる金額が違うんですね。

渡辺:東京が一番恵まれてるんですよ。全国に手を広げたのはいいけど、「そこで営業して大丈夫か?」みたいなところでも配達サービスを展開しちゃってるんですよね。注文する人とウーバーに対応した飲食店とがある程度密集していないと成り立たないじゃないですか。東京の環境で成り立ってるビジネスを、地方にそのまま持ち込んで成立するのかという問題点を、配達員に支払うお金を絞る方向で調整しているように見えます。

ーーう~ん、なかなかひどい……。

渡辺:お客さんとトラブルになった時に電話するサポートダイヤルというのもあるんですが、ここが全くサポートしてくれないというのも配達員の間では有名です。例えば、ウーバーはある時期から現金払いができるようになった関係で、古くからやっている配達員は、現金払いの発注を受けるか拒否できるかが選べるんですよ。僕はお釣りを持ち歩きたくないから現金払い以外の人だけに届けてるんですが、アプリのバグで現金払いの注文が入ってきたことがあって。

ーーそれは大変ですね。

渡辺:自分は悪くないからサポートダイヤルにかけたんですが、そこで言われたのが「頑張って配達してくれ」ってことだけで。「なんとかしろ」しか言われないんですよ。あとこれも聞いた話ですが、配達中の事故に関しては一応保険があるんですよ。でもその保険を使うとアカウントが停止されて、いきなりクビになるんです。

ーーヒドいな~!!

渡辺:あとこれも公式には認めてないですけど、ウーバーの保険って交渉特約がないんです。だから事故の相手との交渉とか弁護士との話し合いから、示談になるまでの交渉を全部自分でやらなきゃいけない。でもウーバーは「保険があるから安心です」って言い張ってるんです。実際はもう本当に放りっぱなしだし、とにかく謝らない。関係者を諦めさせる天才ですね。「配達員にお金は払ってるんだからいいでしょ、嫌なら辞めれば」ということなんですけど、でもその賃金すら勝手に下げたりしますから。

ーーそんな状況なのに、配達員が確保できているのはなぜなんでしょうか?

渡辺:誰でも採用されるからだと思います。どんな人間でもアカウントを作れば働けるから、「もうウーバーしかない」という立場の人でもとりあえずなんとかなる。あと、お金を払うまでのスパンが短いんですよ。週払いで、その週に働いた分が翌週火曜の午前中には入金されてる。最悪、日曜に丸一日自転車に乗って1万5000円くらい稼げば急場がしのげる、という人間にとってはありがたいと思います。そういう意味では貧困層を狙い撃ちにしたビジネスですし、そういう使い方のものだと割り切った方がいいですね。

ーー本当に、ライター業の合間にやるという使い方が正解な気がしてきました。

渡辺:ライター業のネタ集めのツールとしては使えるんですよ。普段行かないようなところに強制的に行かされるから、「こんなところに行列ができてる店があるのか!」とかがよくわかる。全国の都市部で同じことができるのも利点ですね。もちろん本に書いたように自分の健康のこともありますが、例えば緊急事態宣言で普通の人はあんまり外に出られない時でも外出できたから、誰もいない新宿とかを写真に撮りまくってレポート記事を一本書けました。ウーバーで稼げなくても、それで得たネタで雑誌の仕事が増えたりするんです。

ーー自分もライターですし、やったほうがいい気がしてきました……。

渡辺:ただ、本当に専業でやるのは危険です! ウーバーって「嫌だったら辞めればいい」っていう社会の声をうまく利用してるところがあるんですよ。でも、本当にウーバーしかなくて辞めたくても辞められない人だっている。「全部自己責任だし、甘いことを言うな」というのを繰り返した結果が今のひどい社会だし、働き方としては最底辺なんだから、本当はもっと補償がないとダメなんですよね。本ではなるべくそういうテイストを抜きましたけど、実のところはそういう点がヤバいと思ってます。まず専業で働くのはおすすめできないし、でも後がない人ほど専業で働かざるを得ない。そこだけは本当に気をつけてほしいですね。

■書籍情報
『アラフォーウーバーイーツ配達員 ヘロヘロ日記』
著者:渡辺雅史
出版社:ワニブックス
価格:本体1,000円+税

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