中村倫也は『珈琲いかがでしょう』主人公・青山一をどう演じている? 原作のミステリアスで危険な魅力を考察

『珈琲いかがでしょう』青山の魅力を考察

『珈琲いかがでしょう』/ コナリミサト(マックガーデン)

 穏やかな青山であるが、2巻「八杯目 金魚珈琲」では彼の過去に関する描写が登場する。青山は髪を染めジャージを着た姿で登場し、頭から血を流しながら暴力を振るう。他のエピソードにも青山を追う人物が登場したり、怪しげな噂が流れたりと、物語の節々で彼の不穏な一面が描かれるのである。

 しかし作中では悩みを抱く登場人物にスポットライトが当たるため、青山の素性は不明瞭のまま、物語は進行していく。まるで王子のような丁寧な振る舞いと、時折垣間見えるミステリアスで危険を匂わす姿。その二面性こそが多くの人々を惹きつける理由なのだろう。

 『珈琲いかがでしょう』が話題となったのは、中村倫也主演でドラマ化された影響が大きいように思う。ドラマ化決定前から、青山を中村に演じてほしいという読者の声が多く挙がっていた。中村の容姿や穏やかな雰囲気が青山に似ている点、そして前作『凪のお暇』のゴン役で見せた演技力が大きく影響しているのかもしれない。そして案の定ドラマ放送開始直後から「青山沼」にはまってしまう視聴者を多く生み出した。

 原作では垣根志麻との再会をきっかけに、これまで断片的に描かれていた青山の過去にスポットライトが当たり物語は佳境に向かう。なぜ青山が珈琲屋を営みながら各地を転々としているのか。「たこ珈琲」の名前の由縁とは。青山の過去に何があったのか。ドラマの放送が終了するまで青山に関する話題は尽きそうになく、さらなる盛り上がりを見せそうだ。

■あんどうまこと(@andou_ryoubo)
フリーライターとして漫画のコラムや書評を中心に執筆。寮母を務めている。

 

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