オーラル山中拓也が語る、初エッセイで伝えたかったこと「どんなクズでも這い上がれる」

オーラル山中拓也が語る、クズの生き方

自分にしか書けないエッセイ

――20歳の頃に大病を患って生死をさまよったエピソードは驚きました。いまだに原因が分かっていないんですよね。

山中:はい。今でも帰省したとき、当時入院していた病院で検査を受けることがあるんですが、診てくれていた先生に聞いても「医療は進歩したけど、あのときの拓也くんの病気の原因も、なぜ治ったかも分からない」って言われますね。今はバンドを組んで活動しているって話をしたら「CD買いましたよ」って。本当に今生きていることが奇跡みたいなもんですよ。

――検査のための手術もされていたと。

山中:開いたら何か分かるかもしれないって理由だけで2〜3回手術しました。冷静に考えると、そんな手術のやり方ある!?って思いますけど(笑)。当時はワラにもすがる思いでしたね。

――声帯ポリープができたときに処方されたステロイドも、後遺症が大変そうでした。

山中:気持ちが鬱っぽくなるんですよね。僕の場合は顔にデキモノができて、人前に出る仕事やのに管理できてないって叩かれて大変でしたよ。めっちゃ病みました。

――本作では、そのような経験の全てが山中さんらしい言葉で綴られているので、引き込まれました。文章を書くことに関して、影響を受けた人物はいますか?

山中:文章も歌詞もそうですけど、特にいないんですよ。ただ、読者の方に僕の人格を想像してもらえるよう、語尾の細かいところまでチェックして修正しました。少しでも人生の学びにつながってほしいという思いもあるので、上から目線の文章だとムカつくじゃないですか。僕もそういうの気になるタイプなので、自分が伝えたいことを気持ちよく受け取ってもらえるよう、言葉には気をつけましたね。

――ちょっと上から目線にロックスター口調で語るのもアリだったと思いますが、そこは山中さん自身の言葉でってことですね。

山中:僕にその口調は似合わないし、僕がやってもカッコよくないと思うんですよね。それに、自分らしい方がロックな気がしますし。読んでて違和感のある言い回しは、なるべく修正しました。

――文章に山中さんの性格が出ていると思います。メンバーのみなさんが寄せられた作文も個性的ですよね。仲のよさが伝わってきました。

山中:文体にキャラクターが出てますよね(笑)。改めて、こいつはこんな性格なんやなって再確認できました。みんな、付き合いが長いからこそ、面と向かっては言えないことを書いてくれていますね。本の情報が解禁されたときも、みんな予約してくれたみたいです。本当に、ありがたいですね。

――みなさんいいことを書かれているのに、山中さんはメンバーに対して「こいつは俺のことをいじめてて」と暴露しているのも面白かったです。メンバー同士でぶつかった話などもすべて赤裸々に書かれていましたね。

山中:そうですね。そこもちゃんと書かせてもらいました(笑)。「いじめた方は覚えてないからな」って、最近は本人にも言ってるくらいです。そこも含めて、自分のエッセイ本は自分にしか書けないですし、一生残るものだから、嘘は付けないですよね。話せることはなるべく全部、包み隠さず話そうというテンションで挑みました。

――学生時代、パチンコやスロットに熱中していたことも。ちなみに当時やっていた台は?

山中:「緑ドン」か「エヴァンゲリオン」に行って、データが取れないときは「ジャグラー」でしたね。勝つために毎日データを取りに行ってました。ってこれ何の話ですか(笑)⁉︎

――いや、そこでちゃんとデータを集めるというのが、山中さんらしいなと(笑)。運任せにしないところが。そして、本作に掲載されている写真も山中さんらしい素敵な写真がいっぱいでした。

山中:最後の方に載っている写真は、フォトグラファーの江隈麗志さんとの作品で、この4〜5年の間に撮り溜めていたものを載せています。最初の方の写真も江隈さんに撮っていただいたもので、去年の11月くらいに地元の奈良で新しく撮り下ろしていただきました。表紙は僕がとてもリスペクトしているフォトグラファーの中野敬久さんに撮っていただいて、ほかの写真はうちのアートチームが急遽集まって撮った写真です。全て深い関わりのある人たちに撮ってもらった写真なので、思い入れがありますね。

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