萩原朔太郎、星新一、カフカ……作家にとっての「ひきこもり」とは? ステイホーム文学の多様性

文学から紐解く「ひきこもり」の多様性

 フランツ・カフカ「ひきこもり名言集」(頭木弘樹 選訳)は、20世紀ドイツ文学を代表する作家カフカがサラリーマン生活をしながら抱いていた、ひきこもり願望に関する記述を集めたアンソロジーである。

 家にひきこもることは、いちばん楽だし、勇気もいらない。それ以外のことをやろうとすると、どうしてもおかしなことになってしまうのだ(日記)

進んでみたい道を、進むことはできません。いえ、それどころか、その道を進んでみたいと望むことすらできません。ぼくにできるのは、じっとしていることだけです。その他には何も望めません。実際、他には何も望んでいません(恋人のミレナへの手紙)

 ひとりでいられれば、ぼくだって生きていけます。でも、誰かが訪ねてくると、その人はぼくを殺すようなものです(恋人のミレナへの手紙)

 ネガティブ芸というべき、ひきこもりたいと訴える表現のバリエーションの豊富さもさることながら、それを1度ならず2度までも恋人への手紙に書いてしまう空気の読めなさと必死さがなんだか可笑しい。部屋にこもりながら、カフカの小説を読みたくなってくる。

■藤井勉
1983年生まれ。「エキサイトレビュー」などで、文芸・ノンフィクション・音楽を中心に新刊書籍の書評を執筆。共著に『村上春樹を音楽で読み解く』(日本文芸社)、『村上春樹の100曲』(立東舎)。Twitter:@kawaibuchou

■書籍情報
『ひきこもり図書館 部屋から出られない人のための12の物語』
編者:頭木弘樹
出版:毎日新聞出版
価格:本体1,600円+税
http://mainichibooks.com/books/novel-critic/post-756.html

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