『ONE PIECE』ルフィとドフラミンゴの勝敗を分けたのは? ドレスローザ編、複雑な物語を読み解く

最も『ONE PIECE』らしいドレスローザ編

 しかし、ルフィが世界政府打倒を掲げる革命軍のリーダーであるモンキー・D・ドラゴンの息子であるのに対し、ドフラミンゴは、(失墜したとはいえ)天竜人の血筋、この出自の違いは、そのまま戦い方や仲間に対する考え方の違いとなって現れている。

 ルフィが自分から率先して行動する猪突猛進型で、仲間たちはルフィが動き出してから、彼の行動をフォローしようと好き勝手に動き出す。対してドフラミンゴはとても戦略的で、文字通り「裏から糸を引く」タイプだ。理不尽な管理システム(ゲーム)を作り出し、人々を支配する計算高さこそが、彼の恐ろしさだ。最終的に戦いは、ルフィと国民全員が共闘したことで、ドフラミンゴは敗れる。

 何が二人の勝敗を分けたのか?

 戦いが終わった後、ルフィと共に戦った7人の海賊が率いる海賊団(合計5600人)が、ルフィの仲間に加わりたいと申し出る。しかし、ルフィは大船団の船長となると「窮屈」と言って断ってしまう。そして自分は偉くなりたいわけじゃないと言い、親分子分ではなく、お互いに困ったら助け合おうとまとめてしまう。

 その後、ルフィにとって海賊王になるということは、“偉くなること”ではなくて“自由になること”なのだと、海賊の一人が理解する場面があるのだが、ルフィの本質を的確に言い表した場面である。

 自由を求めたルフィと、支配と管理を追求したドフラミンゴ。仲間に対する考え方の決定的な違いが、二人の明暗を大きく分けたのだ。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■書籍情報
『ONE PIECE』既刊97巻
著者:尾田栄一郎
出版社:株式会社 集英社
https://one-piece.com/

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