『同級生』BLをファンタジーとして消化させない——佐条と草壁の恋にリアリティを感じる理由

『同級生』に感じるリアリティ

ふたりの関係を知って素直に戸惑う友人もいる

 「BLはファンタジーだ」という常套句がある。筆者は以前、『同級生』シリーズをやすやすと手に入らないまばゆいほど瑞々しい青春恋愛作品として紹介した(『同級生』シリーズが“青春BLの金字塔”とされる理由 色褪せることのない、佐条と草壁の恋物語を考察)。このうらやましくなるほどの純愛物語を幻想的だと感じる人もいるだろう。ただそういう中にもふたりの関係を知って素直に戸惑う友人、家族の姿や現実にもある法の壁がしっかりと描かれているため、物語に説得力を感じるのだ。

 漫画を読んだだけで「同性を好きになる人の気持ち」「多様な性」を理解した気になるのは、もちろん違う。ただ佐条と草壁と同じように、周囲の視線や価値観、法制度などの壁にぶつかっている同性カップルがいるのは、まぎれもない事実だ。

 身近に同性を好きな人がいるかもしれない。身近な人から同性を好きになったと打ち明けられる日が、自分にも訪れるかもしれない。その時にもしも戸惑いを感じたとしても、その気持ちを素直に伝えることもまた、相手を深く知るための一歩なのではないか。そんなメッセージが『同級生』シリーズからは感じ取れる気がする。

 『同級生』シリーズは、また新たなステージへと進む。佐条と草壁の新婚生活を描く『ふたりぐらし』の連載が決まっているのだ。現実味を帯びつつ爽やかで美しい彼らの恋愛物語が、これからも楽しみで仕方ない。

■クリス
福岡県在住のフリーライター。企業の採用やPRコンテンツ記事を中心に執筆。ブログでは、趣味のアニメや漫画の感想文を書いている。ブログTwitter

■書籍情報
『blanc(ブラン)#1』
中村明日美子 著
価格:本体690円+税
出版社:茜新社
公式サイト

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「漫画」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる