小田嶋隆×武田砂鉄が語る、Twitter論  “オールドメディア”はどうあるべきか?

小田嶋隆×武田砂鉄 新時代のツイート論

ケチをつけるときも面白い言い方で

――たとえば怒りでも、ただ怒ってますという表現ではなくて、ちょっとクスリとさせる点も小田嶋さんのツイートの特徴ですよね。

小田嶋:ものの言い方サンプル集みたいな気分があるんですよ。これをこう言ったら当たり前だけど、こっちの方向から言ってみようかなとか。表現の仕方のいろんなパターンをやってみたいときに140字ってちょうどいいんです。断言してみたり、疑問形で終わってみたり。語尾のバリエーションでも「である」だけでなく「だろうか」だったり「あるまいか」だったりあるじゃないですか。

――どんなツイートをするか考えるときは、ツイートの主題のことよりは表現方法について考えて?

小田嶋:何を書くかという内容より表現方法のほうが大きいと思いますね。安倍さんにケチつけようと思えば毎日20個や30個つけられるんだけど、面白い言い方でケチつけられるんじゃなかったら、あえて言うもんかみたいなところはあったと思います

武田:だから、小田嶋さんの1日のツイート数って、そんなに多くないですよね。

小田嶋:10個かそこらじゃないですか。1日に2、3時間やってるので、1個に15分ぐらいかけてるのかな。ずっと考えてるわけじゃなくて、反応すべきかどうか、タイムラインをだらだら見てる時間もありますけどね。

武田:1年のうち1、2ヶ月ぐらいはツイートに費やしている計算になりますよね。

小田嶋:だからすっかりテレビを見なくなりましたよ。昔は原稿も書かないで何もしてないときってなんとなくテレビつけて、ぼやーっと見てたわけですよ。

武田:自分は、わざわざ不愉快になろうと思いながら、テレビを見ている感覚があります。よく言われる話ですけど、ツイッターで自分がフォローしてる人たちのタイムラインって、比較的自分と考えが似ている人が多いわけので、そればっかり浴びて、あたかも世の中はこうであると勘違いしちゃうのもよくないなと思う。毎日、『バイキング』と『ひるおび!』を交互に見ながら昼ご飯を食べてますから。情報収集の仕方はたぶん自分と小田嶋さんとはけっこう違うと思うんですよね。

小田嶋:『バイキング』見るって偉いよねえ。そういう文芸作品の下読みみたいなことができるのはひとつの能力ですよ。私はツイッターで情報収集することが多い。ただ、タイムラインのなかを漂ってると、一種浮世離れしてはいるんですよね。比較的趣味のいい人たちが見てるものしか見てないので。

――快適なタイムラインは、一方で似た考えの人が集まることによる負の側面も指摘されていますね。

小田嶋:エコーチェンバーって言い方をするみたいですけど、自分でどんどん蛸壺を作っていっちゃうでしょ。蛸壺のなかの人同士でコミュニケーションをとるムラを作っちゃう狭さがある。だから、たまには外に出て「ああ、世間はこうなってるんだ」って『バイキング』とか『ミヤネ屋』見ないとね。

――外からはクソリプもきますし。

小田嶋:クソリプがずいぶん外の空気を入れてくれてるんだと思いますよ。あいつらいなかったら本当にもう、自分だけ気持ちいい変なオヤジになっていきますからね。

武田:クソリプで世間を知るという、その取り込み方がいちばん体に悪いと思うんですけどね(笑)。

この本が売れたら第二集として出したいのは……

――最後に、この本のなかでベストツイートを選ぶとするとどれになりますか。

小田嶋:このなかからベストを選ぶのは難しいですが……箴言集みたいものって最近振り返られてないけど、詩や俳句や短歌だとか短文の伝統が日本語のなかにあったはずなんです。江戸時代なら大田南畝だとか、狂歌師みたいな狂歌や川柳をやってた人たちがいた。そういう伝統が途絶えて久しかったので、今回、少し短い文章でなんか言ってそれで終わり、石を投げるみたいにして去っていくということができたのは、気分がいいですよね。そして、とにかく、これが売れたら、そのご褒美でちょっと薄い第二集のバカネタ編を出したいんですよ。

武田:それはもう、セレクトは自分でやってくださいよ。

小田嶋:ははははは。バカネタはね、パッと見て誰でも笑えるようなネタじゃなくて、「この面白さわかる?」ってちゃんと解説しないとわかんないような奴を自分は偏愛してるんですよ。「気がつかないかもしれないけど、ここに面白い要素が詰め込んであるんだよね」みたいな解説つきで出したいんです。クドクドとしたね。

武田:間違いなく自分でやってください!(笑)

■書籍情報
『災間の唄』
著者:小田嶋隆(著/文)武田砂鉄(著/文)
発行:サイゾー
定価:2,000円+税

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