人はなぜ同人活動をするのか? 『ドージン活動、はじめました!?』が伝える「好き」という気持ちの尊さ

『ドー活!?』が伝える愚直な「好き」の気持ち

 一方で、複数の人間が集まれば社会ができ、トラブルが起きる。同人活動もその例外ではない。妬みからSNSで悪意のあるリプライを送られたり、正解のない同人活動に関するルールや倫理観に関して内部で激しい議論が起こったりすることもある。

 『ドー活!?』は同人活動の魅力、楽しさをイキイキと描きながらも、上記のような側面も美化せず、卑下せず淡々と1つの現実として描いており、そこに真摯な作者の同人愛を感じるだろう。

 また、作中のディティールも半端ではない。遥斗と美晴が同人誌を制作するのに使用した印刷所「西村謄写堂」は実在する。

 『ドー活!?』が連載がスタートしたのは2015年。コロナ禍前のイベントの様子や細かいところで言えば、漫画制作に使われるペイントソフト「Clipstudio」の前身となる「ComicStudio」が現役だったりと数年でも同人やその周辺の環境は常に変化していると実感させられる。

 同人入門書の域を超え、2010年代の2次創作BL同人文化の記録としても卓越した作品だ。遥斗と組む前は1人で小説を書いていた美晴は作中でこう叫ぶ。

「みんな描きたいものがあふれてきてたまらないの! 書いて書いて表現して発散しないと爆発しそうになるの!」

『ドージン活動のススメ!?(1)』

 『ドー活!?』が一貫して描いているのは「好き」に対するまっすぐな情熱、愛情だ。

 好きなものに打ち込み、それを同好の志と受け止め合う。同人の本質的な喜びとはひたむきに「好き」を追求することなのかもしれない。自分の好きがまだ掴めなくても、時に何らかの理由で好きを純粋に楽しめなくなっても、『ドー活!?』は愚直に「好き」を持ち続けることの尊さを肯定してくれる。愛と情熱がなくならない限り、これからも同人文化は繁栄し続けていくだろう。本作は心からそう思わせてくれる作品だ。

 『ドー活!?』は続編の『ドージン活動のススメ!?』2巻も含め、全8巻で完結済み。同人に興味を持っている人はもちろん、さまざまな「好き」を抱えて生きている人に読んでもらいたい。

■日比生梨香子
英国の大学を卒業後フリーライターになりました。山口百恵ファンです。サブカルチャーに関心があります。@highrika1212

■書籍情報
『ドージン活動、はじめました!?(1)』
中条亮 著
価格:715円(税込)
出版社:KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
公式サイト

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